子どものころの記憶がほとんどない--「歌うサイボーグ」だったさくらまや、 無職 からの再出発
「私、犬を7匹飼ってまして。ある日、犬たちが円になって会議している夢を見たんです。『何話してんのよ』って近寄ってみたら、『やっぱり犬のステータスって庭つきのお家よね』って言われたんですよ。事務所が借りてくれた都内のマンションに住んでいたんですが、思い切って庭つきの家を買おう、と、広い庭を条件に探し始めて、たどり着いたのがここだったんです。わが家、ワンちゃんファーストなので、すごく気に入ってます。まさか引っ越してすぐに事務所をやめることになるとは思ってもみませんでしたけど(笑)」 コロナ不況は、“営業”を活動のベースとする演歌歌手たちにも暗い影を落とした。全国の祭り・イベントは軒並み中止。キャンペーン活動は、ほぼ不可能となった。 「私が所属していた事務所も、今まで通り存続させていくのが厳しくなって。『来月で契約を終了したい』という話になりました。私も学費が払えなくなったら困るなと思って、『お給料もらえないと大変だから、独立して、細々とやってみようと思います』と言ってみたら、『あ、頑張って、応援するね』って。だからべつに、揉めたとかじゃないです。今は大変だから、しょうがないね、っていう感じでしたね」
個人事務所を立ち上げてはみたものの、何から手をつけたらいいのかわからない。スタッフはみんな家族で、マネジメントに関してはズブの素人だった。これまで名刺交換も、ほとんどしたことがない。 「立ち上げた当時は、不安でした。数少ない名刺をかき集めて『独立します』ってファクスを送ったら、多少反響があって、他のところから『ウチには来てないんだけど』って言われて、『すいません、すぐ送ります』とか…本当に手探り状態でした」 そうこうドタバタしている間に、ポツポツと仕事が入るようになり、今、なんとかやっている状態だとさくらは笑う。 「今まではマネージャーについて行って、歌って帰ってくるという感じだったので、私、業界に知り合いが全然いないんですよ。歌うサイボーグみたいな感じでした。こんな素人集団で、ここまでお仕事いただけているのは、本当に奇跡みたいなもんだねって、家族と話してるんです」