映像作家・空音央が初の長編劇映画「HAPPYEND」で見せたこだわりの演出術
ニューヨークで生まれ育った映像作家、空音央(そら・ねお)。これまで実験的な映像作品で注目を集め、坂本龍一の演奏を記録したドキュメンタリー映画「Ryuichi Sakamoto | Opus」は大きな話題を呼んだ。そんな中、初めての長編劇映画「HAPPYEND」が10月4日に公開される。大好きな音楽のことだけ考えていたいユウタ(栗原颯人)。次第に政治的な問題に目覚めていく親友のコウ(日高由起刀)。2人の高校生の友情を軸に、近未来の日本を舞台にした「HAPPYEND」は、空監督がこれまでやりたかったことを全て詰め込んだ作品だという。映像作家としての新たな出発点ともいえる「HAPPYEND」を通じて、空監督の作品に対する向き合い方を探った。 【画像】映像作家・空音央が初の長編劇映画「HAPPYEND」で見せたこだわりの演出術
「HAPPYEND」に込めた想い
――「HAPPYEND」は監督にとって初めてのフィクション長編ですね。これまで監督はドキュメンタリーやアート色の強い作品を撮られてきましたが、初のフィクション長編が青春映画というのが意外でした。
空音央(以下、空):この作品は映像作品を撮り始める前、2017年頃から構想を練っていたんです。この作品を撮りたかった理由はいくつかあるのですが、一番大きいのは、自分が大人になりかけていた頃の感情を鮮明に覚えているうちに形にしたいということでした。時間が経つにつれて当時の記憶が薄れてしまうので、緊急性が高かったんです。
――ユウタとコウを中心にしたメインキャラクターの5人に対する監督の眼差しがとても優しくて、監督の個人的な経験が反映されているのでは、と思っていました。
空:そうなんですよ(笑)。自分が高校や大学で経験したことが物語に反映されています。当時の友達との付き合いが今の自分を形成していると思っていて、自分にとって友達はとても大事な存在です。この物語では特に大学の頃に経験したことが反映されていて。友達が政治や社会問題に興味を持ったことで、関係を切られてしまったことがあったんです。逆に僕の方から違う友達との関係を切ったこともありました。だから切る方、切られる方、両方の気持ちがよく分かるんです。