おぎやはぎ・矢作「小木に腹が立つこともある」それでも怒らない理由
相方の小木に腹が立つことも。だから面白い
――過去、仕事のパートナーである小木さんに腹を立てたことはありましたか。 矢作: すごいありますよ(笑)。小木と一緒にいたら、大抵の人は腹が立つんじゃないかな。「なんでそんなことするの?」「そんなこと言うの?」という人ですから。逆説的には、だからこそ小木みたいな面白い人間が生まれるとも言えます。 常識という物差しでいちいち注意して、もし小木が言うことを聞いた場合、小木の面白さが半減されちゃう。ああ見えて小木は人の言うことは結構聞く。あいつは意外と自信のない男だから、僕が「やめたほうがいいよ」って諭したら、素直に直しちゃうタイプなので。 で、普通の人は、きちんと空気を読んで発言しますよね。小木がすごいのはそのレベルを超えて、突拍子もないことを言い出すこと。ギリギリの“ろくでなし”感が人間臭いというか、変な言い方になるかもしれないけど、そういうのができるから芸人として面白い。でもまあ、別にしなくてもいいんだけど(笑)。だけどそれも、れっきとした個性なんです。 そして誰かを怒るとき、みんな「常識、常識」とよく使いますよね。けれど、ときには立ち止まってそれ自体を疑って考えてみることも大事じゃないかな。僕もこうして常識人っぽく話していますけど、「常識人なの?」という自問自答もある。そういえば、「自分が絶対に正しい」と思い込んでいる人はよく怒ります。だから、むやみに怒らないためにも「自分が絶対に正しい」とまず思わないことですね。 ――最近子どものスポーツ教育で“怒らない教育”をしようという風潮がありますが、矢作さんはどう思いますか。 矢作: さっき話した「自分が一番真剣にやるけど人には甘いが理想」と一緒で、スポーツで怒らず子どもたちを強く育てるのは理想中の理想。だけど、それができる優秀な指導者はまだ数えるほどしかいないんじゃないかなと想像します。まずもって、怒ったほうが簡単でしょ。怒らないように人を育てるのは、怒る指導に比べたら何倍も大変。じゃあ怒って指導している人がすごく悪いかと問われれば、その人も情熱を持って取り組んでいるはず。怒らない指導者よりはレベルが下かもしれないけど、その人も一生懸命、部下とか生徒を強くしようと思って頑張っている。その気持ちがちゃんとまわりに伝われば、その人自身の見え方が違ってくると思う。もちろん叩いたり、言葉で傷つけたりしちゃダメだけど、僕の中では、愛情があって、相手にその愛情が伝わっているのであれば、怒るのはご法度ではないです。言うなれば、理想になれない人ということでしょう。 ――ちなみに、お子さんを怒ることはありますか? 矢作: 上の息子は5歳になるんですけど、そろそろ怒られる意味もわかるから、怒ってもいいんじゃないかな。ただ、頭ごなしに叱るよりは、「それさ、やんないほうがいいんじゃない?」という提案。「危ないからダメ!」ではなくて、「こっちのほうが危なくないんじゃない?」という“提案怒り”です。もしかしたら、おぎやはぎの漫才に近いかもしれませんね。 === 矢作 兼 お笑い芸人。1971年、東京都出身。高校の同級生だった小木博明と1995年におぎやはぎを結成。テレビやラジオをはじめ、様々な分野で活躍している。Youtubeチャンネル「おぎやはぎトラベル(https://www.youtube.com/@ogiyahagtravel)」を開設し、2人で海外旅行を楽しんでいる。 Yahoo!ニュース内コンテンツにて、いただいたコメントを取り上げさせていただく場合がございますのでご了承ください。