今さら聞けない「惨事便乗型資本主義」とは? シリーズ「世界の賢人たち」
多くの人々の思想に影響を与えた注目の学者たちを紹介する「世界の賢人ペディア」。今回はカナダ人ジャーナリストであり作家のナオミ・クラインを紹介する。 【画像】マンガで学ぶ「惨事便乗型資本主義」 クラインは、大企業が飽くなき利益追求の末に地球環境を悪化させ、私たちの自由まで脅かしていると警告する。彼女が手がけたベストセラーをもとに、その思考を辿ろう。
ナオミ・クライン(Naomi Klein)
生年:1970年 職業:ジャーナリスト / 活動家 国籍:カナダ 代表著書:『ブランドなんか、いらない:搾取で巨大化する大企業の非情』『ショック・ドクトリン──惨事便乗型資本主義の正体を暴く』など ここがスゴイ:利益を最重要視するグローバル企業の暴走を指摘し、格差や気候問題を解決する経済システムへの変更を訴えた
母ゆずりの反骨心
カナダのケベック州モントリオールで生まれたナオミ・クライン。米国に住んでいた彼女の両親はヒッピーを自称していて、ベトナム戦争への嫌悪感を持ったことからカナダに移住した。 母からジャーナリズム精神を受け継いだのか、クラインはトロント大学在学中に学生新聞の編集長を務め、ライターとしてのキャリアをスタートした。 最終的には大学を中退し、メディアの世界にインターンとして飛び込んだ。
大企業に矛先を向けた一冊
クラインは1999年に出版した『ブランドなんか、いらない:搾取で巨大化する大企業の非情』で、鮮烈な作家デビューを飾る。クラインはこの本で、グローバル企業たちの広告が世の至るところに侵食し、ブランド認知のための場所だらけになってしまっていることを批判したんだ。 そして、その企業の多くは過酷な労働条件のもとで発展途上国の人々を働かせ、商品の製造コストを抑えている。また、大企業による大量生産・大量廃棄のモデルが環境破壊を引き起こしたとも、クラインは指摘しているよ。 興味深いのは、本のなかでクラインが「ブランドは自社の製品で個人のアイデンティティを定義するように仕向けている」と主張した点だ。 多くの企業は製品開発や製造にかかるコストと同じか、それ以上に「広告費」を費やしている。イメージ作りに腐心する企業が際限なく競争を続けることで、私たちの購買意欲が過度に刺激され、「選択の余裕が失われている」と訴えたんだ。