石をペットに…「伴侶石」ブームで大量の石を手荒に洗う石材店に虐待疑惑!?
辛酸なめ子のじわじわ時事ワード【伴侶石ブーム】
韓国では最近、石をペットにする人が増えている……そんなニュースが世界で話題です。少子化の影響でペットを飼う人が増える一方、犬や猫を飼うのが難しい場合、手軽にかわいがれる存在として石が浮上。飼育にお金もかからず、眺めたり触ったりするだけで安らぎます。病気や死別で悲しむこともありません。 【イラスト】真美子さんが持つバッグの抜群の宣伝効果はエルメス「バーキン」並み? 日本にも珍しい鉱物を収集する人や、パワーストーンを「この子」と呼び話しかける人はいますが、石をペットにするブームはまだのようです。韓国カルチャーがトレンドの今、伴侶石も日本の若い世代に受け入れられるでしょうか。 ちなみにアメリカでも1970年代に「ペットロック」が売り出されたそうです。飼育や訓練のマニュアルもあり、ジョークグッズの一種だったのかもしれません。 韓国の伴侶石はパワーストーンと異なり、ありふれたグレーや薄茶色の素朴で地味な石が選ばれているようです。 ローズクオーツ(恋愛運)やタイガーアイ(金運)、水晶(浄化)などの効能がない分、損得勘定なしで純粋にかわいがれます。石に顔を描いて擬人化する人も多いです。よだれを垂らした表情の石と一緒にご飯を食べる人の写真もありました。泡風呂に入れたり、ミニチュアの家具や家を作って安置したり、散歩に連れ出したり、生き物のように世話しています。ここまでしたら魂が宿りそうです。 韓国の商売上手な石材店では、ペットロックとして石を売り出したら即完売。この石材店が大量の石を一度に洗う動画をアップすると、手荒な扱いに「動物虐待では?」とコメントがついたとか。もはや本気なのかネタなのかわかりません。 韓国では俳優や人気ボーイズグループのメンバーが何人も石を飼っていて、ファンは「石になりたい!」と羨望。推しの推しが石、というシュールな現実が。「しっかり餌をあげて世話します。毎日運動もさせます」と語ったのはENHYPENのジェイクです。運動というのは、転がす、ということでしょうか。 人間の気まぐれで飼われることになった石たちですが、そもそも人間より石の方が地球の大先輩で、何万年も、何億年も生きています。そんな石をかわいがる、とは畏れ多いような……。黙って受け止める石は、さすが悠久の時を生きてきただけに寛大です。人間が滅んだあとも、ペットになったつかの間の思い出を忘れないでいてもらいたいです。
石と結婚
世界には石をペットにするどころではなく、石と結婚した女性がいます。英国出身の有名な芸術家トレーシー・エミンさんは、2015年の夏、フランスの海に面した丘にある古代の石と結婚したそうです。 さすが芸術家の感性は常人には計り知れません。「その石はどこにも行かず、私を待っているでしょう」と、ロマンチックな言葉も。自らの人生を作品のモチーフにしているエミンさんなので、石との結婚という行為がアートのようです。エモーショナルな作品を制作したあとは、静かに佇む石の夫に癒やされているのかもしれません。(漫画家・コラムニスト、エッセイスト)