岡崎慎司が語る「うまくいくチーム、いかないチーム」。引退迎えた38歳が体現し続けた“勇気を与えてくれる存在”
偉大なストライカーの選手としての章は幕を閉じた
ドイツ・ブンデスリーガで2シーズン連続2桁ゴール、スペイン2部リーグから1部昇格、そしてプレミアリーグでは優勝を経験。日本代表としてワールドカップに3度出場し、通算代表ゴール数は50を数える。岡崎慎司は数々の記録を打ち立ててきた。 「守備もフリーランもすべてをやりながら、最後のところでチームメイトみんなが僕のことを見てくれて、ゴールを決める」 そんなストライカー像を理想としていた時期があったという。伸ばした手でつかみかけた。いや、一度はつかんだはず。その余韻をずっと追い求めていたのかもしれない。 一緒にスタジアムの中を歩いていると、すぐに「シンジー!」と声がかかる。チームメイトだったり、クラブ関係者だったり、ファンだったり。誰とでも分け隔てなく優しく接し、にこやかに英語で会話をする。軽口をたたきながら、でもことサッカーの話になると熱を帯びる。岡崎慎司はいつでも、どこでも岡崎慎司なのだ。 ラストマッチでもそんなみんなに愛される岡崎の姿があった。選手が次々に2ショットでの写真を撮ろうとする。次はスタッフとだ。日本人ファンからも日の丸の旗を受け取り一緒に写真を撮る。試合後のイベントでも丁寧に参加してくれたファン一人一人に対応する。 成長を渇望し続けた。現状に満足することなく、貪欲にさらに上のステージを求めてチャレンジし続けた。「いつも悔しい出来事ばかり記憶によみがえってきて、もっとみんなに自分を証明したいという強い思いを常に持っていた」と振り返るほどに。 そんな岡崎だから、ファンは「勇気を与えてくれる存在」として愛し続けたのだろう。岡崎はそんなファンからのエールを感謝とともに受け止めている。 「うれしいですね、やっぱり。イメージかもしれないですけど、自分の生き方に対してそう言ってもらえていると思うので。自分の中で、いろんな葛藤がありながら進んできた。自分にとっての挑戦を続けてきました。『ザ・日本人』のメンタリティというのを常に持って、それがあったからやってこれたと思っているので。これからもそういう部分は大事にしたいですね」 プロサッカー選手としての章は幕を閉じた。だが次章はすぐに始まる。闘争心が枯渇することなどない。 <了>