岡崎慎司が語る「うまくいくチーム、いかないチーム」。引退迎えた38歳が体現し続けた“勇気を与えてくれる存在”
「自分の役目は必ずくるなと思うんです。だから…」
そんな岡崎だから、やりきれない自分の今に悩んでいたのだろう。今シーズン頭にフィンク監督は「岡崎の存在がチームにおいてどれだけ大事か。自分と若い選手を結びつけるうえで必要な存在」というコメントを残している。当時の岡崎は、その言葉をピッチ内でのことと受け止めていたのだろうか? それとも……。 「監督とは話していました。監督の言い方だと、どっちかというとピッチ外のほうでしたね。ただ、サッカーってそんなに甘くないと思ってるんで。どこかで必ずチャンスはくる。自分の中では勝負は後半戦かなと。そうなったときに、監督が必要とする選手は絶対自分でありたいなと思っています。今は虎視眈眈とその準備をしています。苦しい状況でも本当にいいチームであれば抜け出せると思う。今の若い選手は多分そこまで考えられない。自分の役目は必ずくるなと思うんです。だから……」 そういって言葉を一度区切った。 「……本当にコンディションだけですね。今ずっと70%でやっているので。いかに100%にしていくかっていうところだけです」 この話を聞いたのが2023年10月。シント=トロイデンの街中にあるカフェでラテマキャートを飲みながら、インタビューをさせてもらった。いずれくるであろうその時のために、コンディションをなんとか上げていきたいと必死に向き合った。だが、100%を取り戻すことはできなかった。
うまくいくチーム、うまくいかないチーム
「40歳まではやるって決めたんで」。かつてそう力強く語っていたことがある。「僕は決めた約束は守るんですよ」。そうも話していた。そんな岡崎が38歳での引退を決意するのだから、膝はよっぽどの事態になっていたのだろう。 さまざまな紆余曲折があった。「いい思い出もあるけど、悔しい思い出も多い」と本人が語るほど、たくさんの苦難に向き合ってきた。その中で勝ち得た知見は大きな価値があるものばかり。 「サッカーって勝たないと自信も生まれないし、結束も生まれない。でも勝たずしてそうしたものを生み出せるかどうかが大事だと思う」と話してくれたことがある。当時はそれを望んでもうまく実現できない環境にいたのかもしれない。だがその後、さまざまなクラブを渡り歩く中で、「勝たずしてそうしたことが生み出せる」チームも実感することができた。 うまくいくチームとうまくいかないチーム。どこに、どのような違いがあるのだろう? 「やっぱり一人一人の選手の役割が明確になっていないときはうまくいかないんだなとすごく感じました。例えば自分が使われたり、使われなかったりの評価基準が見えなかったり。あとシュツットガルト時代はチームに外国人が多かったんですけど、外国人とドイツ人との関係もあまりよくなかった。癖が強い選手が多かったというのもあるけど、すごいギクシャクしてるなって感じていました。ああ、チームってこんな大事なのかって思いましたね。(Jリーグの清水)エスパルスでやっていたときに、どれだけ自分が幸せな立ち位置にいたのかを痛感できました」 当時は、海外初挑戦でのカルチャーショックの一つかと思わざるをえなかったかもしれない。でもマインツへの移籍でそうではないことがはっきりしたという。 「マインツに行ったとき、びっくりしましたね、いいチームだなって。選手一人一人がやるべきことが本当に整理されていた。シュツットガルトのころはみんなめちゃくちゃ文句が多かったんですよ。普段いいやつなのに練習とか試合になったらもう、めちゃくちゃ怒ってくるみたいなのが平気でありました。あとはフェアな競争がなくなってくると、きついなっていうのも感じましたね。(スペインの)カルタヘナとかはそうだったんですけど、試合で点を取る役割のFWがもう決まっていて。そうすると僕は得意なポジションは自分でよくわかっているのに、左サイドに置かれてプレーしなければならないのは年齢的にも受け入れるのがきつかった」