韓国国会、大統領代行に対する弾劾訴追案を可決-政治混乱深まる
(ブルームバーグ): 韓国国会は27日の本会議で大統領代行の韓悳洙首相に対する弾劾訴追案を可決した。「非常戒厳」宣布で非難を浴びた尹錫悦大統領の弾劾訴追から2週間足らずで、政府はさらなる打撃を受けた。
禹元植国会議長によると、採決結果は賛成192、反対ゼロだった。禹議長は採決に先立ち、弾劾訴追案の可決に必要なのは過半数の賛成票だと述べていた。一部の議員は投票しなかった。
韓国大統領代行の弾劾訴追は史上初めて。韓首相は、3日の非常戒厳宣布を巡って尹大統領が14日に弾劾訴追された後、大統領職を代行していた。聯合ニュースによると、首相室が弾劾決議書を受け取り、韓首相の大統領代行の職務は午後5時16分に停止した。
韓氏の職務停止により、崔相穆経済副首相兼企画財政相が大統領職を代行する。
崔氏は政府業務の混乱を最小限に食い止めるよう努めると声明で表明。統合参謀本部に対しては、北朝鮮による挑発の可能性に備え監視を強化するよう指示した。
ただ、崔氏が企画財政相と大統領代行、首相代行の役職全てを同時に効率よくこなすことは不可能に近いと、ソウルの明知大学で政治科学を専門とする申律教授は指摘。「通常の国家の状況ではない」と述べた。
韓国の通貨ウォンは採決後、対ドルで0.6%下落。この日は一時1.1%下げ、2009年以来の安値を付けていた。
憲法裁の欠員
韓首相は26日、尹大統領の弾劾審判を行う憲法裁判所の欠員裁判官について、任命を保留すると表明。これに反発した最大野党「共に民主党」が同日、首相に対する弾劾訴追を発議した。同党は定数300人の国会で170議席を握る。
崔氏は声明の中で、欠員裁判官の任命を巡る立場を明らかにしていない。野党は崔氏に対し、速やかな任命を求めている。
憲法裁判所は27日午後、尹大統領の弾劾審判の最初の弁論準備手続きを行った。次回の準備手続きは1月3日に行われる。
憲法裁は尹大統領の弾劾訴追が妥当かどうか来年6月までに判断を下す。憲法裁の裁判官は定数9人だが、現在は3人欠員の状態。現在の6人体制では全員が賛成しない限り、尹氏は罷免されない。共に民主党は、大統領罷免に向けたハードルを低くするため、早期の空席補充を求めている。