五輪メダリスト・末續慎吾さんのプレッシャーとの向き合い方。一度やめたことで見えてきたもの
「若い頃は『日本のために頑張る』と思い込んでいたし、そういう発言もしていました。だけど、そういう言動って全部プレッシャーとして自分に返ってきてしまうんですよね。でも人ってそこまで大きなプレッシャーを抱えられるものではないと僕は思うんです」。 歳を重ね、多くの重圧を経験することで、末續さんはプレッシャーへの向き合い方が変わっていったという。 「まず、どれぐらいのプレッシャーなら耐えられるのか、自分のキャパシティを知ることが大事だと思っています。その上で、線引きをきちんとする。それができるようになって、プレッシャーを感じることが少なくなりましたね」。
モチベーションが上がらないなら一度やめてみる
やらなきゃいけないとわかっていても、上がらないのがモチベーション。ただ、アスリートはモチベーションが上がらないからといって練習しないわけにはいかない。末續さんはそんなとき、どうしていたのか。 「僕もずっとモチベーションを高めることを意識して頑張ってきたのですが、その結果思ったのは……逆説的になっちゃうんですけど、モチベーションを上げなきゃやれないなら、いっそうのこと“やらないほうがいい”ということ。 例えば、“足が速くなりたい”とか、“痩せたい”とか、そういうのが本来のモチベーションであって、それは色々なところに転がっているはずなんです」。
できない・やれない理由をモチベーションが上がらないから……と、いつの間にかモチベーションを上げること自体が目的になって、本来やりたいことを見失っているのではないか。 そんなときは「一度スパッとやめてしまえ!」というのが、末續さんの提案だ。 「例えばダイエットだったら、好きなだけ太ればいい。筋トレもやめてしまえばいい。中途半端に『痩せなきゃ』と思うからやる気が出ない。でも、『太って動くのがツラい』とか『洋服が入らない』とか、そうやって追い込まれると自然に『このままじゃヤバいぞ』って気づくんですよ」。 究極の選択ではあるが、一度やめたことで見えてくるものがあるということを末續さん自身も経験した。北京五輪が終わった2008年10月に無期限休養を発表したのだ。