「掃除の時間まで残って食べた」「涙目で飲み込んだ」 給食の完食指導、その後の会食恐怖症に 広がった共感
執拗な注意、箸を見るだけで…
母親によると、息子は幼稚園で箸をうまく使うことができず、女性教諭から執拗(しつよう)に注意された。スプーンやフォーク、補助具付きの箸などは使わせず、箸を使って給食を食べきるまで席を立つことを許さなかったという。
息子はそれ以降、家で食事をする時も箸を見るだけで泣き出し、病院で心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断を受けた。小学校に上がってからも給食を食べるのが難しく、保健室登校が続いた。1泊2日の修学旅行では何も食べられず、帰宅後に寝込んだという。
「理解の足りなさが苦しむ人を生む」
中学校では少しずつ教室で給食を食べられるようになったが、学校単位で食べ残しを許さない指導が行われ、担任教諭のPTSDへの理解が足りなかったこともあり、また食べられない状態に戻ってしまった。母親は「一度回復に向かったのにまた食べられなくなってしまったことを本人は悔しがっている。理解の足りなさが苦しむ人を生んでいる」と訴える。
桜子さんは会食恐怖症の認知度が低い一方、自身の体験を紹介した今回の記事が大きな反響を呼んだことに「問題が潜在化している。記事を通して子どもたちの声が社会や大人たちに少しでも伝わればうれしい」。長野の子ども白書編集委員会事務局代表の小林啓子さん(75)=長野市=も「人に話せずに悩んできた人が多いことが分かる。大人はそこに気付かなければならない」と話している。 (近藤理彦)