「コンプライアンス」と言わない老人ホーム、そっちのほうが良心的? 入居者への訪問看護、「不正や過剰な報酬請求」指摘の一方で
利益を目的にした一部の事業者による制度の乱用も費用増加の一因とみられ、財務省は医療財政の圧迫要因として問題視している。 ▽精神科訪問看護の実態を調査、見直しへ 精神科の訪問看護を巡っては、厚労省が見直しに向け動き出した。科学研究費を使って有識者らの研究班を7月に設置。実態を調査し、訪問看護ステーションの基準見直しや、次回2026年度の診療報酬改定に調査結果を生かす考えだ。 過剰な訪問を是正する一方、利用者の状態に応じて適切な支援をしたり、対応が難しい利用者を他機関と連携して受け入れたりする場合は報酬面で評価する方向で検討されそうだ。具体的な内容は来年度、中央社会保険医療協議会(中医協)で議論する。 実態調査は(1)利用者の状態変化に応じてどのように訪問看護をしているか可視化する(2)訪問看護の役割やプロセス、関係機関との連携態勢を整理する(3)高い頻度で訪問する必要がある対象者を明確化する―のが狙い。
訪問看護ステーション10カ所前後を対象に、(1)独立型(2)医療機関併設型(3)地域連携型(4)全国展開型―と4タイプに分け、利用者計約500人のカルテを調べる。利用者の状態をどうアセスメント(評価)し、訪問回数を決めているか分析する。来年3月に報告書をまとめる予定だ。 ▽利用者との対話が何より大事 そもそも精神科の訪問看護とは、どんなことをするのか。 対象となるのは精神、知的、発達障害がある人たち。自宅やグループホームを看護師らが訪ね、困り事の相談に乗って状態の悪化を防いだり、生活支援や服薬管理をしたりする。 東京都内で1人暮らしする50代の永野光介さん(仮名)も利用者の1人。統合失調症があり、「『恐怖感に襲われた』とか『生活費に困っている』とか、いろんなことを相談している」と話す。 利用先の訪問看護ステーション「シナモンロール」(練馬区)は精神科特化で、24時間電話対応する。「頻繁に電話してしまうんだけど、話を聞いてもらえると安心する」と永野さん。これまでに3回入院したが、約5年前に退院してからは地域で生活を続けられている。