「コンプライアンス」と言わない老人ホーム、そっちのほうが良心的? 入居者への訪問看護、「不正や過剰な報酬請求」指摘の一方で
ステーションを運営する看護師の三ツ井直子さん(57)は、医療的なことだけでなく生活全般に目を配り、利用者との対話を何より大事にしている。「利用者さんが安心して自分の声を語ることができるよう、ゆっくり丁寧に話を聞く」と言う。 ▽「締め付けるだけではなく、良質な事業者が増えるように」 精神科の訪問看護は原則、回数の上限が週3回で、1回の報酬額が「30分未満」と「以上」で分かれている。週3回、30分の訪問で件数をこなせば収入を最大化できるが、シナモンロールでは1回の訪問に1時間前後かけることが多い。一方、「回数を増やそうとは思っていない」ので、週3回訪問するケースはごくわずかだ。 利用者に関わる他の福祉事業所や関係団体との連携も意識する。さまざまなつながりの中で、利用者の希望する暮らしを支援するためだ。 三ツ井さんは、制度見直しに向けた厚労省の動きについてこう話した。 「利益優先の事業者への対策として締め付けを厳しくするだけだと、事務負担が増え、全体が影響を受ける。良質な事業者が運営しやすくなり、増えていく方向にしてほしい」
利用者とどう向き合うか、取材の中で三ツ井さんは真剣に思いを語ったが、やはり「コンプライアンス」という言葉は一度も使わなかった。使う必要がないのだと思った。