中国は「一帯一路」不良債権化のリスクをどう乗り切るか
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中国共産党はこのほど全国の党員代表を招集し、第20回全国代表大会(以下、 党大会 )を開催した(10月16日~22日)。党大会初日には、 習近平 総書記が党指導部を代表して、これまでの党の活動実績を総括し、今後の運営目標などを提起する報告を行った。今大会は、習氏が総書記の任(1期5年)を2期務めた後ということもあって、報告では2012年の第18回党大会以降の10年間を振り返ることが多かった。 習総書記は報告の中で、この10年間に生じた歴史的意義を有する出来事として、(1)共産党創立百周年を迎えたこと(2021年)、(2)中国の特色ある社会主義が新時代に入ったこと、(3)貧困からの脱却と小康社会(ややゆとりのある社会)の全面的建設という百年目標を達成したことを挙げ、党の功績として高く評価した。また、10年前の中国は、それまでの努力が大きな成果を挙げ、さらなる発展のための基礎固めができていた一方で、長い間に蓄積した問題と新たに生じた問題の解決が待たれる状況にあったと説明し、党指導部は情勢を推し量りながら困難に立ち向かってきたと強調した。習総書記が総括した党の実績評価をどう捉えるかはさておき、この10年間に中国が経済成長路線や対外経済運営方針などについて、大きな調整局面に立たされてきたことは確かである。 1970年代後半に党指導部と中国政府が経済の制度改革と対外開放政策に踏み切ってから四十余年の間に、同国経済は 世界第2位のGDP (国内総生産)規模を有するまでに成長し、トップのアメリカとの差を縮めている(ドル建て名目GDPの中国対米国比率:1980年7%、2000年12%、2012年52%、2021年77%)。1人当たりGNI(国民所得)の増加には少し時間がかかったが、1980年に220ドルと低所得国の枠内にあった中国は、1998年に800ドルで低位中所得国に、2010年に4340ドルで高位中所得国となり、2012年の5910ドルを経て、2021年には1万1890ドルと高所得国入りが近い水準に達している(世界銀行が2022年7月に公表した高位中所得国と高所得国の境界線は1万3205ドル)。
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岡嵜久実子