『Ryuichi Sakamoto | Opus』監督最新作『HAPPYEND』公開決定!現実と地続きな近未来の青春ストーリーを描く
短編映画『The Chicken』(20)、コンサートドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto | Opus』(23)で世界中の映画祭から注目を集めた新鋭、空音央監督の長編劇映画デビュー作『HAPPYEND』が10月4日(金)に公開されることが決定。オーディションで主演に抜擢された栗原颯人、日高由起刀を写した場面カットにキャスト情報、監督コメントが一斉に解禁された。 【写真を見る】長井校長役で個性派俳優の佐野史郎が出演 本作は幼馴染で大親友の2人が、高校卒業を控えて自分自身と向き合うようになり、なんとなく一緒だった関係から少しずつ変化していく友情の揺れ動きや葛藤をエモーショナルに描いた青春映画。物語の舞台は決して遠くはないXX年後の未来で、現実の生活と地続きであるリアリティのある世界がユーモラスかつシニカルに映しだされている。 空監督は東京とニューヨークの2拠点を活動軸とし、短編映画、ドキュメンタリー、PV、アート作品、コンサートフィルムなどジャンルレスに数多くの作品を手掛けてきた。志賀直哉の短編小説をベースにした『The Chicken』はロカルノ国際映画祭でのワールドプレミア後、ニューヨーク映画祭など名だたる映画祭で上映。坂本龍一が最後の演奏に臨む姿を映した『Ryuichi Sakamoto | Opus』では、ピアノ演奏のみのシンプルかつストイックな演出ながらヴェネツィア国際映画祭でのワールドプレミア以降、山形、釜山、ニューヨーク、ロンドン、東京と世界中の映画祭で上映、絶賛されてきた。 本作でスクリーンデビューを果たした主演の栗原と日高。それぞれ、栗原が明るい性格で友だちとずっと楽しいことだけをしていたいユウタを茶目っ気たっぷりに演じ、日高は自らの進路や社会について考えるようになるコウの心の機微を繊細に表現している。 このほか、2人と仲の良い同級生役に、公開作が相次ぐ注目の若手俳優、林裕太、フォトグラファーとして国際的に活躍中のシナ・ペン、大学での学業に励みながら演技に初挑戦したARAZIが出演。そして人一倍正義感が強くコウと関わるようになる同級生フミ役に祷キララ、ユウタとコウたちの担任の先生、岡田役に中島歩、校長秘書の平役に矢作マサル、ユウタの母役に渡辺真起子、コウの母役にレゲエシンガーのPUSHIM、そして長井校長役を佐野史郎が務め、主人公たちを取り巻くように実力派俳優たちが個性豊かなキャラクターを演じて物語に深みを与えている。 解禁された場面カットは、笑顔のユウタとどこか怪訝そうなコウの2人の表情の違いが印象的な1枚。2人が見つめる先にあるものは何なのか。気鋭の注目監督が描く青春ストーリーという点でも期待で胸が膨らむ。 ■<コメント> ●空音央(監督) 「友情とは曖昧なもので、恋人や家族のような規範がありません。人によっては、いつもの風景に溶け込んで、たまたま同じような音楽を好み、お酒を介して理解し合える相手もいれば、真剣な話だけをする相手もいます。しかし、どんな形であれ、友人に対する愛や信頼が深いほど、その相手に落胆した時に湧き上がる怒りや悲しみは凄まじいものです。勢い余って関係を断ち切ることもあれば、知らず知らずのうちに断ち切られることもあります。そうなると、自分が乗っかっていた地盤がガラガラと崩れ落ちるような感覚に陥ることがあります。 そんなことを考えながら、この映画を思い立ったのだろうと思います。メモを見返すと、記録として残っている中で最も古いものが2017年でした。つまり、7年かそれ以上前からこの映画の構想を練り始めたようです。その時の社会や世界が変わらず、そのまま進んだ少し先の未来を想像しました。恐怖を煽り、軍国主義的な独裁国家へと着実に向かってゆく日本を舞台に、それまで自分の中に蓄積されていた危機感や揺らぎ、そして自分にとってなくてはならない、地盤ともいえる友人たちに対する愛を投影しました。 自分が想像した近未来像が間違っているといいなと願いながら脚本を書いていましたが、出来上がった映画を見てみると、なんだかどんどん現実味を帯びてきているようで、少し残念です。同時に、そのような状況だからこそ、素晴らしいキャストとスタッフと一緒に、色んな人にいま見てほしい映画に仕上げることができたと思っています。劇場公開できることを本当にうれしく思います」 文/平尾嘉浩