【エディージャパン検証】「超速ラグビー」の理想型を"見せつけられた"フランス戦 集散で負けては勝負にならない
ラグビー日本代表(以下ジャパン)は、11月10日にテストマッチオータムシリーズの第2戦をフランス代表(以下フランス)と行い、12-52と大差をつけられて敗れた。両国の対戦は2022年11月以来2年ぶりで、通算成績はジャパンの1分13敗となった。 この対戦が行われたのはラグビーフランス代表チームのホームスタジアムであるスタッド・ド・フランス。8万人の収容人数を誇るこのスタジアムに集ったフランスを応援する観衆の多くは、試合開始直後いきなり悲鳴を漏らした。 キックオフ後の密集のすぐ後ろでSHアントワーヌ・デュポンがキックしたボールをジャパンのLOワーナー・ディアンズがチャージしそのままボールを拾ってゴール直前まで迫ったのだ。そのままトライにまで持っていければジャパンにとってはこの上ない先制パンチとなり、その後の試合展開も大きく変わったのではないかと予想されるのだが、フォローしたプレーヤーがノックオンを犯し、自ら流れを手放してしまった。 それどころか、時にムラっけを見せ、プレーが雑になって自滅するフランスの気を引き締めさせてしまったようだ。フィジカルに勝るFW陣が密集近辺を突いて、防御網を引きつけ、大きく空いた外のスペースで個人技に勝るBK陣に勝負させる、あるいは長いキックパスを送るという、ジャパン相手の際の「定番の戦法」をしっかりと遂行し、チャンスは確実にトライに結びつけ、前半終了までに5トライ3ゴールを奪い31-0と試合を早々に決めてしまった。 ジャパンは様々に仕掛けて何とか突破口を開こうとするのだが、フランス防御網は慌てず騒がずといった風情で、ボールキャリアーを確実に潰していき、シェイプアタックでも、キック処理後のカウンターアタックでも、ジャパンに有効な攻撃をほとんどさせなかった。特に前半はボールキャリアーへのフォローが遅れがちで、殺到してきたフランスに密集でターンオーバーを喰らうシーンが再三見られた。個々のフィジカルで劣る分、スピードとフィットネスで対抗しようというのが基本的なコンセプトのチームが集散で負けていては文字通り勝負にならない。 後半になってようやく反撃らしい反撃が出始めたジャパンは10分にCTBディラン・ライリーの突破からオフロードパスを繋いで、最後にSO立川理道がゴール左隅に飛び込んでトライを奪うが、意図したプレーが結実したのはこれ1回だけ。21分のテビタ・タタフのインターセプトからのトライは一か八かのディフェンスがたまたまうまくハマった、いわばラッキーパンチ的なもの。そうそううまくいく場面が出るとは思えない。 最終的には8トライ6ゴールを奪われた。ディフェンス網が完全に破綻した文字通りの完敗だった。素早いプレーを連続させて、相手のディフェンス網を置き去りにするような展開でトライを奪う、というのが「超速ラグビー」の理想型のはずだが、この試合において、その理想型に近いプレーを見せていたのは、皮肉にもフランスの方だった。ジャパンの強みの一つであるセットプレーは比較的安定していたものの、スクラムにせよラインアウトにせよ、互角以上に渡り合って、ボールを奪い取るシーンが数多く見られないと、それ以外の局面の劣勢を挽回するまでには至らない。 全ての局面におけるスピードアップと、より強力で正確なセットプレーを構築しない限り、上位チームとの対戦はこの試合の結果をなぞることになるだろう。2027年に向けてエディーHCがどのようにジャパンを強化していくのかを興味深く見守って行きたいが、そろそろ強豪国相手に互角以上の戦いを見せる姿を見てみたいというのもファンの率直な思いだろう。オータムシリーズ残り2試合に期待したい。 [文:江良与一]