異常なほどに人のものを欲しがる「クレクレちゃん」。度重なる問題行動の裏にあった意外な理由
他人に平然と迷惑をかけるトラブルメーカー、あなたの周りにもいませんか? だけどよくよく話を聞いてみると、その困った行動の裏には、なにか理由があるのかもしれません。 【マンガを読む】『欲しがるあの子を止められない』を最初から読む SNSで話題になったぱん田ぱん太(@pandapantade)さんのコミックエッセイ『欲しがるあの子を止められない』も、そんなエピソードのひとつ。友人・きよかさんの実体験を描いたこの作品に登場するのは、異常なまでに人の物をなんでも欲しがり、自分だけが得することに執着する女性「チコちゃん」。しかしその異様な行動の裏には、彼女の生い立ちから来る理由があったのでした……。 ■『欲しがるあの子を止められない 』あらすじ 姪っ子にしてもらったネイルを軽い気持ちでSNSに投稿した主人公のきよかさん。すると学生時代の同期・チコちゃんから「どこのサロン?」「友達割引ある?」「紹介して」「いつ行ったらいい?」と次々とDMが。 きっぱり断ってもしつこくDMしてくるチコちゃんに困ったきよかさんは、共通の知り合いでもある大学時代の友人に相談します。 大学時代にも周囲を困らせる「クレクレ」エピソードを量産していたチコちゃん。友人たちのコンビニスイーツを一口ずつもらおうとねだったり、サラダバーを注文しないのに友人の皿からサラダを取ったり、財布を忘れたといってお金を借りたまま返さなかったり。友人の夫が勤める美容院を訪れて「友達割引で切ってくれ」と騒ぐトラブルも……。 ついには子どものころの話にまでさかのぼり、チコちゃんの家に遊びに行くと母親から「本日子どもたちに出したおやつ代の請求書」が渡される、というドン引きのエピソードもでてきました。 チコちゃんに迷惑をかけられた友人たちは結束して、「本人に直接言っても話が通じない」と、チコちゃんの夫に連絡を取ることにしました。チコちゃんの夫も妻の価値観や行動がおかしいことには薄々気づいていたようです。 そんなある日、遊びに行った友人の大谷さん宅の台所で、チコちゃんが盗み食いをしていたという決定的な出来事がおこります。その話を聞いた夫は、チコちゃんにその理由を問い詰めました。すると、チコちゃんは子どもの頃の家庭環境から話を始めたのでした……。 チコちゃんの父親は不倫をして離婚、チコちゃんは母ひとり子ひとりの母子家庭で育ちました。節約や倹約にこだわるようになったチコちゃんの母親は、スーパーで無茶苦茶な値切り方をしたり、デパートでクレーマー的な行動をしたり、職場の食事会では母子ふたり分の食事を「1人分」で割り勘しろと要求したり……。「自分たちだけがトクをする」ためなら、平然と度を越した行動をしていました。 母親が周囲から文句を言われても、自分のために節約してくれているのだと感じたチコちゃんは、「私もお母さんみたいになりたい」と思ったのだそうです。 チコちゃん夫婦は盗み食いをしてしまった大谷さんの家へ謝罪をしに訪れました。 チコちゃんの異常行動を目撃していた大谷さんの奥さんは、かつて家族との関係をこじらせた過去があり、チコさんの行動に理解を示します。こうして自分の行動の異常さに気づくことができたチコちゃんは、優しい旦那さんに支えられて自分を変えることができたのでした……。 このエピソードをマンガにまとめて発表した、ぱん田ぱん太さんにお話を伺いました。 ■作者・ぱん田ぱん太さんインタビュー ──人間関係のトラブル実体験レポートかと思いきや、それぞれの登場人物の思いが丁寧に語られていて予想外の展開でした。このエピソードをマンガにしようと思ったきっかけを教えて下さい。 ぱん田ぱん太さん:きよかちゃんからチコちゃんの話を聞いているうちに、インスタでよく見かける「変な人が現れ、スカッと撃退」といったマンガではなく、もっと深く踏み込んだ内容の特別なマンガが描けるかもしれないと思ったことです。 ──チコちゃんをめぐるこれらの話をきよかさんから聞いたとき、どんなことを考えたのでしょうか? ぱん田ぱん太さん:対人関係のトラブルに巻き込まれることは、多かれ少なかれ誰にでもあると思うのですが、その時に「この人は変な人だなあ」とだけで終わらせずに、その人の背景に何があったのか、なぜその人の中でその変わった価値観が構成されていったのかを知ることはとても興味深く、大事なことだと感じました。そうすることで自分自身を省みたり、再び対人関係トラブルに巻き込まれた時のうまい立ち回り方にも繋がるのではないかと思いました。 ──読者の方からはどんなコメントがありましたか? リプライや引用RTのコメントで印象に残っているものがあれば教えて下さい。 ぱん田ぱん太さん:ご自身も家庭環境に問題があったという方々から「チコさんの気持ちが分かる」「チコちゃんのように価値観が捻じ曲がってしまった人が救われてほしい」という内容をたびたびもらい、特に印象に残っています。 ──今後、描いてみたい作品やテーマがあれば教えて下さい。 ぱん田ぱん太さん:私自身が一児の母で、家庭環境や親の価値観が我が子の人格形成にどのような影響を与えるのか、どうしたら我が子が幸せに育ってくれるのか常に考えています。そのため、今後も「家族関係」が主なテーマとなるマンガが多くなると思います。 * * * このエピソードがTwitter(現X)に投稿されたときは、2.5万リツイート、3.9万いいねもの反響がありました。「冒頭からは予想のつかない展開」「いろんな教訓が詰まってる」「すごく深い展開で考えさせられた」などのコメントが寄せられています。チコちゃんをめぐるこのエピソード、あなたはどんなふうに受け止めるでしょうか。 ※作者コメントは2023年3月のインタビューを再構成したものです。 取材・文=レタスユキ