「毎朝1杯」のコーヒーが飲めなくなるかもしれない…じつは深刻な「コーヒーの2050年問題」をご存じですか
雨天にも対応できる精選
「気候変動により栽培面でも品質面でも様々な影響が出ているという話を生産組合の人から聞きました」(有永さん) その対策として、藤井さんは11月にジマエリアの生産組合で営農セミナーを実施。木製ハンドパルパー(脱穀機のようなもの)による精選の導入を提案した。 「木製ハンドパルパーは簡単に作れるし、手動のため電気不要です。コンパクトなのでほ場に運んで使用できます」(藤井さん) 一番のメリットは皮をむいてから精選するため、雨天でも比較的早く乾燥させやすいところにある。
コーヒーの木の新植も
もうひとつ、コーヒーの新植を推奨した。コーヒーは乾燥後に雨が降ることで、水分ストレスの変化で開花する。ところが、老木になるとストレスに鈍感になり、開花時期がずれるため新植を生産者に提起した。 「新植をすすめつつ、新しい栽培方法も説明しました」(藤井さん) 雨が多くなったとはいえ、乾期は非常に乾燥する。コーヒーの木の下に低木の木を混植をすることなどを生産者に提案したという。
進む品種開発
話は前後するが、キーコーヒーは2016年にWCRと連携し、品種開発に協力することにした。WCRがスタートした、「国際多地域実証試験」に取り組むことにしたのだ。国際多地域実証試験とは何か。広報チームの田口勇治さんに説明してもらった。 「世界各地から品質の優れたアラビカ種をWCR に集めて培養し、繁殖させたものを世界各地のコーヒー生産地で栽培する実証試験です」(田口さん) WCRが世界各地にコーヒーの苗木を配布。送られてきた品種を栽培することで、その地域に最適なコーヒーの品種を発掘する試みだ。2017年からキーコーヒーでは、インドネシアのトラジャに所有する直営農園(東京ドーム約113個分)の一角で実証試験を行なっている。 各国の試験栽培で収穫した生豆とデータがWCRに集められる。それらをWCRが取りまとめ、分析、研究を行なう。と同時に、WCRがその生豆を世界中のQグレーダー(コーヒーの品質鑑定を行なう国際資格保持者)に送る。彼らがカッピング(テイスティングと品質鑑定)を行ない、その評価をWCRに報告する。 「弊社では2名のQグレーダーがカッピングを実施しました」(田口さん) コーヒーの木は栽培してから数年経たないと収穫できない。各国の農園に最適な品種の確定には、もう少し時間がかかりそうだ。