中国が迫る尖閣諸島 日中衝突はあるのか?元陸将と台湾の研究者が語る懸念
2020年、中国の公船が尖閣諸島周辺の接続水域を航行した日数は333日にも及んだ。今年2月には、海警局に武器使用を認める海警法も施行された。日本は反発し、自衛隊や海上保安庁の対処力強化を求める声も上がっている。尖閣問題は日米首脳会談でも大きなテーマとなりそうだ。緊迫する現状をどう読み解けばよいのか。陸上自衛隊の元陸将と台湾の研究者に聞いた。(ジャーナリスト・小川匡則、森健/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
海軍と一体化した中国海警局
■山下裕貴・千葉科学大学客員教授、元陸上自衛隊・陸将 「日本の南西諸島を俯瞰的に見てください。中国の戦略上、重要なのは第1列島線で、南シナ海から台湾を経て日本の九州あたりまでを結んでいます。軍事的な視点では、第一列島線の内側にある尖閣諸島は小さな島にすぎず、列島線上にあり、太平洋に通じる宮古島のほうがはるかに重要なはずです。ただし、中国が尖閣に圧力をかける理由もあります」
「1949年、中国に共産党政権が誕生して以来、彼らの目標は、香港、マカオ、そして台湾を編入し国家を統一することです。最後の目標が台湾です。台湾侵攻はアメリカに加えて、日本も干渉する場合がある。南西諸島が近いからです。そのためには日本を牽制しておく必要がある。その方策の一つが尖閣への圧力だと思います」
山下裕貴氏は、2015年まで陸上自衛隊で陸上幕僚副長や中部方面総監などを務めた。2000年代半ばには特殊作戦群の創設にも関わり、2009年からは沖縄地方協力本部長として、南西諸島への自衛隊の配備にも関わってきた。現在の中国は軍事力を相当に増強しており、国際法を無視した海洋進出が危なげに映るという。 「中国のとくに海軍は質・量ともに急速に発展し、隻数、トン数、戦力比で見ても、海上自衛隊を圧倒しています。太平洋に出て艦隊行動ができるほどで、もはや大陸国家から海洋国家になりつつあります。すでに空母を2隻保有し、その他の艦艇も増強中です。たとえば、揚陸艦というのは航空機と兵員を載せ、強襲上陸するための艦ですが、中国の新型揚陸艦は約4万トンで、ヘリ30機、兵員1500人、ホバークラフト3隻を搭載。また、海軍陸戦隊は3万人以上に増強されるとの指摘があります。日本とは比較できない戦力です」 「さらに2015年から、中国は軍改革で習近平国家主席をトップとする中央軍事委員会を強化、権限の集権化と陸・海・空軍の統合作戦能力の強化に力を入れています」