【平和島ボート・サンスポ杯 東京ダービー】技巧派レーサーへの転向を余儀なくされた福来が胸中を明かした/ボートレース
水面はレーサーの人生を映し出すスクリーンだ。予選トップ通過を決めた福来剛が、準優12Rで逃げ快勝。優勝戦の絶好枠を自らの手でつかんだ。 「気持ちは1年間、無事故完走が目標。そういう思いが今節も結果につながった」 昨年12月の芦屋GⅠⅠⅠ企業杯でコンマ01のフライング。年末の多摩川一般戦でも初日にコンマ01の勇み足に散り、2節続けての返還欠場となった。 F2は当然、重い足かせとなり、今シリーズの平均スタートタイミングはコンマ20。それでも的確なさばきで予選を4勝オール3連対にまとめ、堂々の首位で18強入りを果たした。 「F2は大変です。スタートをしっかり行って、勝つスタイルだったけど、レースの内容をアグレッシブにして、1つでも上の着を目指している。見せるレースをしたい」 初日10Rのイン戦ではコンマ06の速攻戦で主導権をつかんだが、「入っているなと思ったけど、あそこまで早いとは思っていなかった」と猛反省した。 しかし、言い換えれば勝負どころで必ず威力を発揮する強靱(きょうじん)な精神力の持ち主だ。現在、ボートレーサーの数は約1600人。苦境の中で、ここまでスリットを攻め立てられるのは、ごくわずかだろう。 「準優は『まくられてもいいや』って気持ちでいった。優勝戦もしっかりスタートを入れて、無事故完走だけを目指す。そういう思いがいい結果につながってくれているし、きっと明日(優勝戦12R)もそうなる。優勝だけを目指すのは駄目」と、あくまで自然体で挑む構えを強調した。 平和島は過去15優出5Vの実績を誇るが、新春Vは他場でも達成していない。「地元戦は乗れる方(実力者)が多い。ゴールデンウイーク(2012年・江戸川)で優勝したことはあるけど、なかなか、取れないタイトルのひとつ。足は中堅くらいだし、決して威張れることはないけど、チャンスはあると思っている」と優勝へ意欲を示した。 速攻派から技巧派へ生まれ変わった43歳が、難境を乗り越えるべく、〝価値ある1勝〟を手にする。(加納空樹)