長野県伊那市と栃木県那須塩原市で導入されたEVバス「e-JEST」。地方公共団体が目指す循環型社会の行方
なお、カルサン社ではEVバスだけでなく、燃料電池バスの開発にも力を注ぐ。パワートレーンとなるFCスタックはトヨタ自動車の技術を用いることが2024年9月に公表された。 そのカルサン社と総販売代理店契約を結び、日本での販売業務を担うアルテック株式会社(東京・中央区)では、2023年2月に伊那市に対してe-JESTを提案。1年半後の2024年8月19日にe-JEST日本導入第1号車を伊那市へ納車した。
伊那市では長らくの間、市民の移動向けに市内循環バス「イーナちゃんバス」を3台体制で運行していた。車両にはディーゼルエンジンを搭載した小型バスを使用していたが、2024年にそのうちの1台が入れ替え時期となるためe-JESTが選ばれた。 ■EVバスに期待を寄せる伊那市 同日、伊那市の市役所においてEVバス出発式が開催された。開催にあたり伊那市長である白鳥孝さんは、「地方公共団体の循環バスとしてのEVバスは全国初の試みです。周辺地域のEV化を促進したい、これが導入のきっかけでした。市民の移動時に発生していたCO2をEVバス導入により削減できるとして大いに期待しています」と語り、続けて「伊那市では2025年に一般家庭で使用する電力のうち53%を再生可能エネルギーにしようと取り組んでいます。小水力発電、薪ストーブやぺレットストーブなどを積極的に導入することで、すでに40%台まで達しました。EVバスはこうしたCO2削減に向けた取り組みと足並みを揃えるという意味でも期待しています」と伊那市の取り組みとe-JESTの関連を説明する。
e-JESTを用いた市内循環バスであるイーナちゃんバスの運行は、これまで同様、ジェイアールバス関東が担当する。 「我々は2019年4月からイーナちゃんバスの運行を担当しています。e-JESTは走行時のCO2排出がないという点で環境にやさしいわけですが、それだけでなくバリアフリー化/ノンステップ化を実現しており、さらに車いすの乗降時に活用するスロープが標準装備となっている点でも利便性が大きく向上しています。車両整備に関してはアルテックさんと連携を図りながら進めていきます」と語るのは、ジェイアールバス関東の代表取締役社長である小塙隆一さんだ。