電力自由化は国のエネルギー・環境政策の目標達成に貢献できる?
国のエネルギー政策の目標は、安価かつ環境性能が高いエネルギーを安定的に安全に国民に提供することにあります。電力自由化の目的も、安定供給の確保、電気料金の可能な限りの抑制、消費者の選択肢と事業者の事業機会の増加とされています。エネルギー供給の4割程度を占める電力の自由化は、国のエネルギー政策の目標達成にどのように寄与するのでしょうか。
エネルギー供給量の目標に政府は口出しできない?
資本主義国はエネルギー供給を市場に任せるために、国が細かな目標値を提示することは通常行いません。ドイツなどの欧州諸国は、太陽光、風力発電などの再生可能エネルギーによる将来の供給比率を示していますが、再エネ供給量は市場ではなく、固定価格買い取り制度などの政策が決めています。 英国政府も原子力発電所の目標値を発表していますが、英国の原子力発電所も英国政府が固定価格買い取り制度という政策により支えています。市場に任せるため、市場が決定する各エネルギー供給の比率を国が目標として示すことは困難です。
図1が米国のエネルギー省による将来の電力供給の予想を示していますが、これは予想であり目標値ではありません。
図2が示す日本政府の2030年の電源構成比率は目標値であり、予想ではありません。この電源構成に基づき、日本政府が国連の気候変動枠組み条約事務局に提出した30年の温室効果ガスの排出量目標値も設定されています。
上記の表は日本、米国、欧州連合(EU)の目標を示しています。 日本の温室効果ガスの目標値、13年との比較で30年に26%削減は、二酸化炭素をほとんど排出しない再エネと原子力の低炭素電源を合計44%にすることが前提です。再エネは固定価格買い取り制度により導入が促進されています。 その買い取りにかかった費用は電気料金で負担されていますが、16年度の買い取り負担額は約2.3兆円、再エネにより節約できる燃料費5000億円を勘案した上で1kWh当たりの負担額にすると2.25円、月間使用料300kWhの標準家庭で月額675円の負担です。