Pixelのデザインは製品化まで約2年を要する――Googleデザイナーが語る哲学 国立新美術館で特別展示も
AIスマートフォンとして知られるGoogle Pixelシリーズは、その外観デザインにも独自の個性がある。12月11日から23日まで国立新美術館で開催される特別展示「GOOGLE HARDWARE DESIGN STUDIO DINING TABLE, 2024」は、そんなGoogleのデザインフィロソフィーを体感できる場となっている。 【画像】Pixel 8aで採用されたブルー系色「Bay(ベイ)」のテーブルセット 本稿では展示の様子とともに、グループクリエイティブディレクターのRachel Rendely(レイチェル・レンデリー)氏、インダストリアルデザイナーの松岡良倫氏への取材から見えてきた、Googleが目指すデザインの世界を紹介する。
色彩で魅せるハードウェアの世界
花柄の壁紙を背景に設置された約5メートルのダイニングテーブルには、8つの異なる「場」が用意されている。これは、ミラノサローネ国際家具見本市で発表された「Making Sense of Color」の日本向けアレンジだ。 展示されたテーブルセッティングには、デザインチームによって手作りされた要素が随所にちりばめられている。例えば、ケーキのオブジェは手作業で染色されたシリコンの層で作られており、各カラーの持つ喜びに満ちた個性を表現している。また、製品に使用されるリサイクルプラスチックのペレットや再生アルミニウムなどの実際の素材も、テーブルの装飾として効果的に取り入れられている。 各テーブルセッティングには「Made by Google」というメニューカードが添えられており、その色が持つストーリーとともに、製品に使用されているリサイクル素材の割合なども記されている。例えば、火山ガラスを思わせる漆黒の「Obsidian(オブシディアン)」のセッティングでは、再生アルミニウムをテーブル装飾のモチーフとして使用。メニューカードには、その製品における再生アルミニウムの使用割合が示されている。
Pixelデザインの柱は「人間性」「楽観性」「遊び心」
Googleのハードウェアデザインでは、ハードウェアデザイン バイス・プレジデントのIvy Ross(アイビー・ロス)氏が掲げた「Human(人間性)」「Optimistic(楽観性)」「Daring(遊び心)」という3つのキーワードを哲学の柱としている。「テクノロジーが進化すればするほど、ハードウェアは人々に寄り添うものでなければならない」。この考えは、製品開発のさまざまな場面に反映されている。 Pixelのデザインは、構想から製品化まで約2年を要する。「最初の3カ月ぐらいで基本的な方向性を決め、その後1年ほど設計とのやりとりを重ね、最後は量産準備に入ります」と松岡氏は説明する。この工程は構想に5%、設計者とのやりとりに90%、工場での品質管理に5%という配分で進んでいく。 デザインの特徴的な要素である丸みのある形状について、松岡氏は「水の表面張力のような、自然な丸みを意識しています。まるで手作業で滑らかに削り出したような、そんな曲線を追求しているんです」と語る。1つの形状を決めるために約30種類ものバリエーションを作り、社内の3Dプリンタで実際のモックアップを製作。チーム全体で検討を重ねながら、最も心地よい曲線を選んでいくという。 その丸みへのこだわりは、時に社内での議論も生む。「端末の角を丸くすることで、画面上で表示できる情報量が制限されてしまうため、ソフトウェアチームとはよく議論になります」と松岡氏は笑う。「アイコンを表示するスペースが少なくなってしまうと言われるのですが、それでも私たちはあえて丸みのあるデザインを選択しています」
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