【このニュースって何?】サントリーHD社長に創業家から → 社長ってどうやってなるの?
日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんがヒントを教えます。
社長になる人には三つのパターンがある
酒類大手のサントリーホールディングス(HD)の社長に2025年3月25日付で鳥井信宏副社長が就くことが決まりました。 サントリーは1899年に鳥井信治郎氏が大阪で創業した会社で、信宏氏は信治郎氏のひ孫にあたります。信宏氏はサントリーの6代目の社長となりますが、5代目の新浪剛史・現社長を除けば、歴代の社長はみんな鳥井一族の人です。こうした創業者一族が経営を担う会社を同族経営の会社といいます。ちなみに、社名のサントリーは太陽のサンに名字の鳥井をくっつけてできたもので、社名からして鳥井家の会社であることを表しています。 会社の社長にはどういう人がなるかをパターン分けすると、大きく三つのパターンになります。一つは鳥井信宏氏のような創業者一族の人が就くパターンです。二つ目は、一般の従業員として入社した人が社内で出世して就くパターンです。「サラリーマン社長」と言われます。もう一つは、「プロ経営者」と言われる人です。経営者として優秀だと認められた人が外部から招聘(しょうへい)されていきなり社長に就くパターンです。今回はこの三つに分けて、具体例を紹介しながら、それぞれのいい点と悪い点を考えてみたいと思います。 まず、創業者一族の人がなるパターンです。会社には必ず創業者がいます。誰かがつくらなければ会社は存在しません。創業者はおおむね最初の社長です。日本の大きな会社は株を発行して資金を集める株式会社がほとんどです。創業者は最初に資金を出して株を持ち、会社が成長するにつれて買い増しているのがふつうです。つまり、成功した創業者の多くは、経営者であり大株主でもあるのです。 創業者が高齢になると、2代目にバトンを渡す時が来ます。社長であり大株主でもある創業者は後継者を決める権限を持っています。信頼できる子どもや兄弟姉妹を2代目社長にしたいと思うのが人情でしょう。一族に適任者がいなければ社員の中から優秀と思える人材を社長に据えることがあります。しかし、一族への思いが強ければ、一族の適任者が育つのを待って再び同族経営の形に戻ることもあります。 サントリーのほか、日本最大の企業であるトヨタ自動車もこうした形の同族企業と言えます。トヨタ自動車のルーツは戦前、豊田佐吉氏創業の豊田自動織機内に設けられた自動車部です。その後、これがトヨタ自動車となり、佐吉氏のむこ養子である利三郎氏が初代、長男である喜一郎氏が2代目の社長を務めました。その後、佐吉氏のおいにあたる英二氏が5代目、喜一郎氏の長男の章一郎氏が6代目、章一郎氏の弟の達郎氏が7代目の社長を務めました。その後、豊田家に適任者がいなかったことなどからサラリーマン社長が3代続きましたが、11代社長に章一郎氏の長男の章男氏が就き、約14年もの間、経営しました。そして2023年に佐藤恒治氏にバトンを渡しました。佐藤氏はサラリーマン社長です。