EU離脱観測まで浮上、金融市場が不安視するフランス総選挙とその後
■ 2027年までの基本シナリオ なお、RNやこれと共闘する勢力が最終的に狙うのは議会掌握も去ることながら次期大統領の椅子だ。途中で辞任せずともフランス大統領は三選禁止であり、2027年にはマクロン大統領は退任し大統領選挙が実施される。 EUの歴史を紐解けば、欧州委員会に対して過激な要求を展開して選挙に勝利した政権の多くが、経済・金融情勢の混乱を通じて短命に終わっている。2027年の大統領選挙で勝利したいのであれば、これから生まれるだろう極右中心の議会であっても大きな無理は避けると考えられる。 今回のフランス政局流動化はユーロ相場にとって愉快な材料ではないが、底割れを促すような材料として騒ぐのは行き過ぎにも思える。もちろん、長い目で見れば、欧州議会の選挙結果を見る限り、ドイツ、フランス、イタリアといった主要国のほかオーストリアも極右の伸びが著しい。長い目で見れば、EUの政策運営が右傾化し、内向きになっていく兆候の始まりという見方は可能である。 ※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2024年6月4日時点の分析です 唐鎌大輔(からかま・だいすけ) みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト 2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(2022年、日経BP 日本経済新聞出版)。
唐鎌 大輔