兄さん、がめついじゃないか…「遺産9,000万円」を遺して亡くなった86歳父、3人兄弟の仲を引き裂いた〈曖昧な遺言書〉の気になる中身とは?【弁護士の助言】
弁護士からのアドバイス
康夫さんは、誠さん、俊夫さん、雅人さんの3人が喧嘩をしてほしくないがために遺言書を作成したにもかかわらず、かえって争いの火種になってしまいました。 「土地は誠が守る」という文言は、一見すると所有権を移転させることを望む文言にも見えますが、ほかの遺言の文言によっては、不明確な文言と判断されることがあります。実際に、東京地裁令和3年5月20日の裁判例では、「私の所有全財産は姪のXに与えます」「土地はYが守る」との記載があった遺言書について、「守るとの文言の意味するところは明らかではなく、Yに土地の所有権を与えるとの意味であるとはいえない」、と判断されました。 では、康夫さんはどのような遺言書を残せば良かったのでしょうか。 仮に康夫さんの遺志が、自宅の土地建物は誠さんに相続させ、俊夫さんと雅人さんには土地建物以外の財産を2分の1ずつ残したいというものだとすると、以下の内容を記載する必要があります。 1. 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長男誠(昭和〇年〇月□日)に相続させる。 記 1土地~ 2建物~ 以上 2. 遺言者は、前条に記載した財産以外の一切の財産を次男俊夫(昭和〇年〇月□日)及び三男雅人(昭和〇年〇月□日)に各2分の1の割合により相続させる。 上記のように、遺言書は、「平等」「守る」などのいろいろな解釈ができる文言ではなく、「相続させる」「2分の1」とできるだけほかに解釈することができない文言を使用する必要性があります。 実際の遺言書を作成する際は、上記文言以外にも、祭祀承継や遺言執行者についても規定したほうが相続人間のトラブルを避け、想いを相続人に引き継ぐことができます。 より正確な遺言書の作成を検討する際は、弁護士等の専門家のサポートを得ることが、ご自身の意向が反映された遺言書の作成につながります。 三浦 裕和 弁護士
三浦 裕和