暗黒物質検出器「XENONnT」が稀なニュートリノ衝突現象の観測に成功
■地球外ニュートリノによるCEvNSの観測に初成功!
一方で今回のXENONコラボレーションでは、より低エネルギーなニュートリノでのCEvNSの検出に成功しました。より具体的には、太陽中心部の核融合反応で生じる「ホウ素8」という稀な原子核から放出されるニュートリノと、XENONnT内にあるキセノン原子核とのCEvNSで生じる信号を検出しました。地球の外に由来するニュートリノで発生するCEvNSを捉えたのは今回が世界で初めてとなります。この信号の検出は、分析する人のバイアスがかからないような分析方法で行われた結果、全くの偶然である可能性は0.35%であると計算されました。 低エネルギーの地球外に由来するニュートリノによるCEvNSを捉えられたことは、XENONnTの本来の目的である暗黒物質の探索にも役立ちます。CEvNSによる信号は、暗黒物質と原子核が衝突した時の信号と似ている可能性があります。これらの信号が区別できない場合、暗黒物質の探索はニュートリノによるノイズに邪魔されて上手く行かないでしょう。宇宙全体を満たすニュートリノによるノイズであることから、これは “ニュートリノの霧” と表現されます。 今回、低エネルギー地球外ニュートリノを検出できたということは、XENONnTが “ニュートリノの霧” を捉えられること、暗黒物質による真の信号と、ニュートリノによるノイズを区別できるということを意味しています。もし将来的にXENONコラボレーションが有望な信号を捉えた場合、それが暗黒物質によるものか、それともニュートリノなどのノイズであるのかを見分けられるため、暗黒物質の発見の主張が議論の余地が少ない形でできる、という希望に繋がるでしょう。また、他のニュートリノ検出器と比べて数百分の1程度のサイズの検出器でもニュートリノを捉えられたことから、XENONnTは暗黒物質探索だけでなく、ニュートリノを観測する装置としても活躍することが期待されます。 Source “First measurement of a nuclear recoil signal from solar neutrinos with XENONnT”. (XENON Dark Matter Project) “XENONnT 実験での太陽ニュートリノによる原子核散乱事象の測定結果”. (東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構) “How do you look for CEvNS?”. (Oak Ridge National Laboratory)
彩恵りり / sorae編集部