【相撲編集部が選ぶ夏場所13日目の一番】大の里、うるさい宇良をさばく。3敗は琴櫻と2人となり、初Vへ好視界
ここのところの相撲内容も、琴櫻よりいいように見え、初優勝への視界は悪くない
大の里(押し出し)宇良 「突き放さないモロ手突き」 いうなればそんな感じだろうか。 この立ち合いが、宇良に対してはベストだったに違いない。大の里が、昔の太刀山ではないが、“ひと突き半”で宇良を土俵の外に吹っ飛ばし、3敗をキープした。 優勝へ向け、負けられない大の里のこの日の相手は宇良。立ち合いから潜って足を取りにきたり、突き合いの中で相手のタイミングを外したりと、相手との間合いを自在に操る力士なので、見ながら立つ必要があり、かといって見すぎると一気に出てきたりするので、厄介な相手だ。さらに、この日が初顔合わせとなれば、なおさらやりにくいはず。 【相撲編集部が選ぶ夏場所13日目の一番】照ノ富士が朝乃山の挑戦退け1敗堅持。あすVを懸け霧馬山と対戦へ 立ち合い、仕切り線いっぱいでなく、少し下がって微妙に間合いをずらそうとしてきた宇良に対し、大の里は相手を見ながらのモロ手突き。まあそこまでは誰でも考えそうなところだが、相手を突き放してしまおうと腕を伸ばしきるのではなく、ヒジにゆとりを持たせながらの突きとしたところがうまかった。 宇良は当たった直後、潜ろうとしたのか、あるいは何とか大の里の圧力に耐えようとしたのか、左を前にして横を向くような変則的な体勢になり、一瞬大の里の突きは外れかけたが、小さな突きにしていた効果で外れることはなかった。 また、若干上から突き下ろすような形にはなったが、宇良に合わせて無理に腰を下げたり、頭を下げたりしなかったことも、変則的な体勢に対応するうえではよかったのかもしれない。大の里は立ち合いの勢いを殺すことなく、さらにヒジを伸ばさずに左で宇良のノドを押すという形で、危なげなく相手を土俵の外に運んだ。 「圧力を掛けられたか」「考えていた攻めだったか」の質問に、「ハイ」と返した大の里。うるさい相手に対してもしっかり前に出て快勝できたことは、今後へ向けていい材料になるだろう。 この日は、琴櫻が勢い込んで当たってくる湘南乃海を立ち合いの変化で降して2敗対決に勝利、もう一人の2敗だった新入幕の欧勝馬はさすがに若元春には通じず3敗に後退し、優勝争いは5人の4敗力士を含む混戦ながらも、徐々に琴櫻vs.大の里という形になりそうな空気も漂ってきた。 あす14日目は琴櫻が阿炎、大の里は湘南乃海との対戦が決定。千秋楽は予想になるが、琴櫻は豊昇龍、大の里は阿炎との対戦が濃厚だ。大の里は千秋楽に阿炎を残すのは少し嫌だが、豊昇龍戦も残す琴櫻に比べれば対戦相手の面ではやや有利、加えてここのところの相撲内容も、琴櫻よりいいように見え、初優勝への視界は悪くない。 「(優勝は3敗した時点で)ないものだと思って、来場所につながるように頑張ります。15日間取り切るだけ」と、優勝をできるだけ意識の外に出して臨もうとしているように見えるが、それが吉と出るか。 琴櫻としては、何とか一番勝負の決定戦に持ち込んで本割の借りを返し、大関の力を見せたいところだ。 初日から横綱、大関陣が全滅し、大荒れの中で始まった今場所だが、ここにきてようやく、どうやら優勝力士は三役の中から出ることが濃厚になってきた。 文=藤本泰祐
相撲編集部