【時速194キロ死亡事故】大分地裁が危険運転致死罪認め懲役8年の判決 制御困難な高速度と判断、妨害目的は成立せず
大分市内で時速194キロで車を運転し、死亡事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)の罪に問われた被告の男(23)=同市=の裁判員裁判で、大分地裁(辛島靖崇裁判長)は28日、同罪の成立を認め、懲役8年(求刑懲役12年)を言い渡した。辛島裁判長は「ハンドルやブレーキ操作のわずかなミスで、進路から逸脱して事故を起こす危険性が認められる」と述べた。 争点は、同罪の対象となる▽進行を制御することが困難な高速度▽妨害目的―の2類型に該当するかどうかだった。 辛島裁判長は判決理由で、「現場の道路は15年以上、改修がなく、わだち割れがあったと推認できる」と指摘。その上で、プロドライバーや視覚の研究者の証言内容に基づき、「速度が上がれば車の揺れは大きくなり、ハンドル操作の回数が多くなる。運転者の視野は狭くなり、夜間は視力も下がる」と言及した。 「ひとたび操作ミスが起これば、瞬時に車線を逸脱し、立て直しが困難となる。蛇行やスピンをし、事故を起こす事態が容易に想定できる」と述べ、制御困難だったと認定した。 弁護側は「被告車両は道路に沿って直進走行できていた」として、過失運転致死罪にとどまると訴えたが、辛島裁判長は「実際に進路を逸脱していなくても、実質的に危険性があった。被告が法定速度を守っていれば、事故を確実に回避できた」と判断した。 検察側が求めた「妨害目的」の成立は「右折してきた被害車両の通行を妨げる積極的な意図が認められない」として退けた。 量刑理由では、「法定速度の3倍以上の常軌を逸した高速度。常習的に高速走行を楽しんでいた。身勝手で自己中心的」と非難した。一方で、事故現場で献花を続けて反省の態度を示し、若年であることなどを考慮した。
濃い紺色のスーツにマスク姿で出廷した被告は、膝の上に手を置き、裁判長をじっと見つめて判決を聴いた。閉廷が告げられると立ち上がり、遺族に向かって深々と頭を下げた。 判決を受け、大分地検の小山陽一郎次席検事は「主張が一部受け入れられなかったことは遺憾。判決内容を検討し、上級庁と協議して対応する」とのコメントを出した。被告側の弁護人は報道陣の取材に対し、「判決内容を精査する。控訴するかどうかのコメントは差し控える」と述べた。 事故を巡っては、検察側が2022年7月、被告の男を過失運転致死罪で在宅起訴。同年12月に危険運転致死罪に訴因を切り替えた。 <メモ> 事故は2021年2月9日午後11時過ぎ、大分市大在の県道(法定速度60キロ)で発生した。当時19歳だった被告の男は、乗用車を時速194キロで走らせ、交差点を右折してきた乗用車に激突。運転していた同市の男性会社員=当時(50)=を出血性ショックで死亡させた。