【ラムサール条約】猪苗代湖保全の弾みに(11月16日)
猪苗代湖のラムサール条約登録に向けた準備が進んでいる。国際的に重要な湿地と認められれば、自然保護活動の推進や「ラムサール・ブランド」を冠した観光地としての魅力向上に弾みがつく。猪苗代湖の国際的な認知度を高め、未来へつなぐためにも多くの県民が条約の趣旨を理解し、行動に移していきたい。 日本野鳥の会郡山、会津両支部は昨年、猪苗代湖を囲む郡山、会津若松、猪苗代の3市町に条約登録を申請するよう要望した。これを受け、3市町は今年、猪苗代湖環境保全推進連絡会を開き、条約登録を目指すことを確認した。県を特別委員に迎え、4者が連携して登録に必要な情報票の作成や地域住民らの理解醸成に取り組んでいる。 猪苗代湖は年間を通して70種類ほどの鳥類を観察できる。連絡会事務局の郡山市によると、特にコハクチョウが多く飛来する環境が条約の基準を満たすとしている。年内に申請書類をまとめ、国内の登録条件を満たした上で、条約事務局に申請する。登録地を審査する締結国会議(COP15)は来年7月、アフリカ南部のジンバブエで開かれる。これに合わせた登録を目指している。
県内では、2005(平成17)年11月に尾瀬(檜枝岐村、群馬県片品村、新潟県魚沼市)が登録されている。猪苗代湖が認められれば県内2カ所目、国内54カ所目となる見込みだ。面積は1万960ヘクタールに及び、国内では琵琶湖に次いで2番目に広い。 ラムサール条約は、暮らしを支える湿地の生態系を守る「保全・再生」、そこから得られる恵みを持続的に活用する「賢明な利用」、これらを促すための「交流・学習」の三つを目的にしている。登録によって新たな規制が講じられたり、利用が制限されたりすることはない。ただ、来訪者の増加によって動植物の生息域に影響があっては元も子もない。観察や学習、交流ができる場を設けるなどの施策は必要だろう。 地域住民らは、水質低下の原因とされる水草の除去や湖岸への漂着物の回収などを通じて猪苗代湖を守ってきた。条約登録を契機に、環境保全への意識を一層高め、郷土の自然遺産を次代にしっかりと受け継いでいかなければならない。(湯田輝彦)