【ひねもすのたりワゴン生活】滋賀から城崎、そして神戸 5日間1500㎞のクルマ旅 その10
その時、ふと思い出した。2湯目の鴻の湯に向かう時、妙に気になる店構えがあったのである。ガラス張りで中が覗けたのだが、カウンターバーのような設えで、せいぜい8、9席。あとは4人掛けの小さなテーブルがひとつというコンパクトな店だったが、カフェかスナックに居抜きで入ったような雰囲気だった。表には「TERME」と表札のようなシンプルな看板。イタリア語で温泉という意味らしいが、ランチ営業を終えた後で店内に人影はない。いったい何の店なのか気になりながらも、外湯巡りに気が急いて、そのまま後にしたのだった。で、ビールを飲みながら店名をネットで調べてみたら、“ワイン酒場”となっていて地元の食材をイタリア料理をメインとして楽しませてくれるらしい。虚飾を配した店の作りといい、地元食材&イタリアンというコンセプトといい、興味が湧いてきた。
とはいえ、もう19時近く…席数も少ないから、おそらくダメだろう。期待薄だったが、藁にもすがるような思いで電話をかけた。しかし、返ってきたのは、「2名様ですか。ちょうど空いてますよ。ほかのお客様も7時半くらいにお越しになりますので、そのあたりでいかがでしょう」という嬉しい返事。首の皮1枚つながった…コンビニ飯を回避できたのである。
【筆者の紹介】 三浦 修 BXやXMのワゴンを乗り継いで、現在はEクラスのワゴンをパートナーに、晴耕雨読なぐうたら生活。月刊誌編集長を経て、編集執筆や企画で糊口をしのぐ典型的活字中毒者。 【ひねもすのたりワゴン生活】 旅、キャンプ、釣り、果樹園…相棒のステーションワゴンとのんびり暮らすあれやこれやを綴ったエッセイ。
三浦 修