【ひねもすのたりワゴン生活】滋賀から城崎、そして神戸 5日間1500㎞のクルマ旅 その10
鴻の湯は城崎の外湯で最も古く、1400年前、舒明天皇の時代にコウノトリが足の傷を癒したことから発見されたという話が伝わっている
全面露天風呂で人気の「御所の湯」
さかのぼること2時間ほど前、外湯巡りに出かけようと宿の玄関に降りると番頭さんが現れたので、「湯巡りの後、夕食をとりたいのですが、お勧めってありますか」と声をかけてみた。すると、「城崎温泉は食事付きでお泊りのお客様が多いので、外食のお店はあまり多くないんですよ」と、少し困ったような顔になる。川沿いを走ってきたとき、軽食を出すような店は目に入ったけれど、せっかく城崎に来たのだから日本海の幸など地元の滋味を楽しみたいと思っていた。しかし、老舗宿の番頭さんが漏らしたひと言にそんな想いが揺らぎ始めたのである。
これは困った…まさか夕食難民になるとは…。 私の狼狽を見て気の毒に思ったのか、「ビール専門店の割引券なんですが、よかったらお使いください」とハガキほどの紙を差し出した。
で、外湯巡りの道すがら、目に入るそれらしい飲食店に尋ねてみたが、予約で満席。やはり数が少ないから競争率が高いようだ。仕方がないので御所の湯を出た後は、件のビール専門店のドアを開き、まずは、喉を潤して作戦を考えようという算段になった。
鴻の湯は城崎の外湯で最も古く、1400年前、舒明天皇の時代にコウノトリが足の傷を癒したことから発見されたという話が伝わっている
広々と解放的な店内はレストランというより、西海岸のカフェといった風情。和風な城崎温泉のイメージではないが、賑わっているのだから美味いのだろう。さっそくクラフトビールを頼み、フードメニューに目を移す。やはり、並んでいるのは、ピッツァなどビールと相性のよさそうな軽めの品ばかりだ。その中で目にとまったのが兵庫産である但馬牛のたたきで、これもビールにも合いそうだ。近江八幡からのロングドライブ、そして5軒の外湯巡り…疲れた身体にクラフトビールが染みわたる。いやぁ旨いのなんのって……但馬牛もほどよく冷やされた皿で供され、なかなかのもの。料理は期待薄だったので、そのギャップもあって舌が大喜びするが、これだけで城崎温泉の夜を終えたくはない。まぁ、どうにもならなかったら、コンビニで何か買って宿の部屋で乾杯!(笑)。外湯めぐりがことのほか楽しかったのだから、そんな夕餉も受け入れられそうな気がする。