大学入試対策「英語」と決別した学校の驚きの変化 世界87位、日本の英語力が低下している理由
英語で英語を学ぶ「Cambridge English」
Cambridgeの英語カリキュラムは、知識(文法、語彙力、表現、音声等)と4技能(読む、書く、話す、聞く)のすべてをバランスよくカバーしつつ、コミュニケーションに重点を置いています。日本の英語教育とは真逆で大量のコンテクストの中に身を置いて英語に浸るうちに、次第に文法も習得していきます。まさに子どもたちが母国語を習得していく過程と同じです。 導入校のニーズに合わせて、教育方針、生徒のレベル、教員の指導力等に合わせて教材をカスタマイズすることが可能で、高槻中高でも最適かつオリジナルなカリキュラムが策定されました。さらに、英語教員は、トレーナーから助言を受けて、日々指導力の向上を図りCambridgeが求める英語教育の指導体制の基準を満たすことで、日本の中高で初めてBetter Learning Partnerとして認定を受けました。 「導入当初、これまでの日本の教科書を使った授業に慣れている先生からは、いわゆる文法や読解の授業をしなくて、日本の大学入試を突破できるのかと不安視する声もありました。しかし、英語が母国語のしかもトップクラスの大学の教材で勉強して、英語の力がつくのかと心配するのは、滑稽な話です。 確かに、京都大学の英語の入試問題は、いまだ哲学めいた難解な英文を和訳する問題です。受験を突破するために対策は必要でしょうが、その結果英語力が身に付かないのは本末転倒です。4年目の今、国内の学力推移調査でも高得点を取ることができていますし、留学生と交流しても瞬間的に英語でレスポンスできるようになっています」(工藤校長) 同校では、Cambridgeの英語カリキュラム以外にも、フィールドワークや留学生との交流、スタンフォード大学のオンライン講座など多くの取り組みを実施し、英語を「使う」力を身につけていきます。
学びの森と呼ばれる図書館で行われる多読の授業
さらに、英語教育の一環としてカリキュラムに取り入れられているのが、図書館で行われている多読の授業です。 高槻中高には中等教育としては日本一と言ってもよい図書館があります。工藤校長が探究学習の基盤として図書館を作ろうと決心し、頼ったのが鬼丸晴美先生でした。 鬼丸先生は、前勤務校でもすばらしい図書館を監修され、長く多読多聴を実践されてきましたが、工藤校長の思いに共感し、これまでの集大成として、高槻中高に赴任され、図書館の監修と英語教育の改革に取り組みました。 現在は英語の授業の一環として多読のクラスを担当しています。「学びの森」と呼ばれる図書館の蔵書は6万冊。ヨーロッパの名門大学の図書館をモデルにした格調高いしつらえで、一歩入るとまるで別世界。ハリーポッターの世界のような知の森が広がっています。その中で鬼丸先生による多読の授業が行われていました。