大学入試対策「英語」と決別した学校の驚きの変化 世界87位、日本の英語力が低下している理由
本場の英語教育に舵を切り成果を出す高槻中高
そんな中、根本的に英語学習を変えて成果を出し始めている学校があるので紹介しましょう。それは、大阪府高槻市にある私立高槻中学校・高等学校(以下、高槻中高)です。 今回は、その英語教育について、工藤剛校長と多読の授業を担当する鬼丸晴美先生に取材しました。 高槻中高は、1940(昭和15)年に創立された男子校ですが、現在は共学化し6カ年完全中高一貫教育を行う進学校です。 この学校の英語教育の特徴は、英語で英語を学ぶ教育。採用しているのは、「Cambridge English」のカリキュラムです。Cambridge University Press & Assessment(以下、Cambridge)とのパートナーシップのもとに作られた教員研修と英語カリキュラムです。 授業では、Cambridgeが出版するテキストを使用します。これは、イギリスのケンブリッジ大学の一部局であるCambridgeが英語教育の世界的エキスパートらとカリキュラムを研究・作成し、編纂したものです。この教科書の最大の特長は、母国語(日本語)を介さずに英語を学ぶことですが、このカリキュラムを採用した理由を工藤校長に聞きました。 自身も英語教師である工藤校長は、それまでの日本の英語教育について次のように言います。 「英語教育については、一億総評論家といわれるくらい、さまざまな考え方があります。しかし、考えなくてはいけないのは、VUCAの時代といわれる今、日本の最大の課題は何かということです。 私は、かつてよりこのままでは日本は立ち行かなくなるという強い危機感を抱いていました。日本では明治維新以来、海外の知識を得るために英文和訳を中心とした英語教育が行われてきましたが、グローバル化する世界の中で、真に世界の課題を理解するためには、総合的な英語力の育成は欠かせません。 そこで、中等教育に関わるものとして、これまでの大学受験に照準を置いた日本の英語教育は変えていかなくてはいけないと考えています。その思いを強くしたのは、大学入試改革の頓挫です。英語4技能を測る民間試験が大学入学共通テストに導入することが決まり、本校でもその準備を進めていましたが、導入直前で取り消しになりました。 その時に、『何のための議論だったのか。高槻は高槻の教育をする。独自の道を行こう』と決心したのです。そして、4年前に舵を切り、グローバルスタンダードであるCambridge Englishを採用することにしました」