SBI北尾会長が語ったサウジ交渉「2カ月半」:リヤドが目論む次世代のデジタル王国【2024年始特集】
「半導体は産業のコメ、皇太子が一番望むもの」
「中東が変われば、世界は変わる」と考え、中東戦略を強めていくことになったわけだ。ちょうど僕のところはこれから半導体を始める。クラウン・プリンス(ムハンマド皇太子)が一番欲しているのは半導体だ。石油の次に自国でどんな産業を作るかを考えたとき、半導体は産業のコメ(米)だ。何を作るにも半導体が必要なわけだ。 この2か月半の間、集中して話し合いを進めた。今後はもちろん、締結したメモランダム(基本合意)を具現化していく。サウジに半導体工場を作るというアイデアも、こちら側から提示した。 ──アラムコとの基本合意には、デジタルアセットに関連する業務提携がある。例えば、原油や石油製品などの資産をトークン化して、取引がデジタルにできるようなことは考えられるのか? 北尾:今回サウジからは、鉱山開発やアルミニウム生産会社の幹部を含む十数人が来られた。各業界の方々に対して僕たちはそれぞれ(事業)提案を行った。例えば、サウジには現在、PTSが存在しないから、これを作りましょうとか。 PTSとは:Proprietary Trading Systemの略で、証券取引所を介さずに株式などの資産クラスを売買できる私設取引システムのこと。SBIが株主で、北尾氏が会長を務める大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)は、株式のPTSと、不動産などを裏付け資産とするセキュリティトークン(ST)のPTSを運営している。 僕たちも社内からそれぞれの専門家を総動員して、あらゆる提案を行った。(ブロックチェーンを基盤に)トークン化、デジタル化することで、石油を含むサウジの産業が大きく変わると思う。 僕が10年若かったら、もっともっとエネルギッシュに色々なことができたと思う。もうすぐ73歳になろうとしている。あまりやり過ぎても、後の人たちが困るだろうとも思っている。まずは、リヤドに我々のオフィス、SBIミドルイースト(SBI Middle East)を作る。 ──仮にリヤドにデジタル取引所が開設したとき、それを日本の大阪デジタルエクスチェンジと繋ぐことになるということか?サウジで金融資産をトークン化する場合、どんなものが対象になると考えているか? 北尾:全部つなぐよ。そのために、僕たちはシンガポールやドイツのシュツットガルト、スイスの取引所と提携をしてきた。今後も他の海外の取引所とも提携しようと思っている。 (サウジにおいて資産のトークン化を考えるとき)いろいろなものがあり得るだろう。土地の値段はものすごく上がっている。サウジの新規株式上場を見ていても、株価は安定しており、莫大な資金がサウジに流れ込んでいる。ものすごいマーケットになっている。 SBIと海外の取引所との連携:SBIとスイス証券取引所(SIX)はシンガポールに合弁企業「AsiaNext」を設立し、既にシンガポール金融庁(MAS)から運営ライセンス(RMO)を取得している。また、SBIは2019年に、ドイツ・シュツットガルトに本社を置き、欧州でデジタルアセット関連の事業を行う「Boerse Stuttgart Digital Exchange」と「Boerse Stuttgart Digital Ventures」に出資を行った。 僕のなかでは、(サウジ事業については)8合目まで来たのかなと思っている。あとは、半導体をきちっと進めていけば、ある程度は見えてくるだろう。サウジの半導体工場建設に、僕たちと台湾がどう入っていくかということだ。