『巨大地震注意』という言葉のインパクトが招いた自粛ムード「パニック状態に」観光地はキャンセル続出も「3.11を経て大きく伝えた方がいいと葛藤も」
■聞き慣れないワードに「パニックになった」「恐怖心を煽られた」
政府、気象庁が注意を呼びかけると同時に、日常の経済活動については支障がないともコメントしていたが、聞き慣れないワードに多くの人々が強烈な不安にも襲われた。静岡県出身で歌手・モデルの當間ローズは「僕の実家は湖の目の前で、南海トラフが起きたらもう何かしらの影響が出ると言われている地域。この注意報が出た時に『本当に来る』と思ったようで、もうすごいパニック状態で親からも連絡が来た。『いつ来るの?どうしたらいいの?』と。調べてみたら、来る可能性があるみたいだから一応、備えだけはしておいてと伝えたが、自治体の対策もなくて、誰に何をどう聞けばいいのかみんなわからずパニックだった」と地震直後の様子を振り返った。 またコラムニストの河崎環氏も、大きな不安に襲われた一人だ。「私からすると『巨大地震』という4文字のインパクトがすごくて、恐怖心を煽られた。ものすごく恐ろしいことがこれから起こるんだという気持ちになったのは仕方ない。『巨大地震警戒』『巨大地震注意』という言葉を使わずに、政府や気象庁がうまくコミュニケーションできたかといえば、それもわからない。初期はこういうことを何度も繰り返しながら国民が慣れていくプロセスなのでは」と、理解も示した。
■海沿い観光地はキャンセル続出の事態に
一部地域ではけが人も発生したが、経済的に大きな打撃を受けたのが観光業などを営む人たちだ。和歌山県では10日に予定されていた南紀白浜花火フェスタが中止になったのをはじめ、各地の海水浴場などが臨時休業、もしくは閉鎖に。鉄道でも特急電車の運行取りやめが相次いだ。またJRでも新幹線で一部の地域は徐行運転が続いている。和歌山県串本町でダイビングショップ「ARK Diving Shop」を経営する川田圭太さんのところにも、キャンセルの連絡が続出。例年ならお盆期間中は100から200件の予約が入るところ、地震翌日からキャンセルが相次ぎ、現在は60件ほどしか予約が入っていない。 川田さんは「お盆は毎年最も忙しい時期の一つで、客も予約をお断りするぐらい来るが、今年に関してはもう全然、暇な状態。自衛のためにご自身で判断されてキャンセルする人もいれば、特急が出ていなくて物理的に行けなくなった人もいる。町の様子は特に変わってもいないし、海についてはどちらかと言えば、すごく穏やかな状況が続いていて、ダイビングするには本来であれば適している」と、現状を語った。 キャンセルされる立場からすればつらいが、ただキャンセルする側の気持ちもよくわかる。「売り上げの数字だけ見れば『もう、なんだよ』と思うこともあるけれど、心情としては理解できる。自分たちを守らないといけない中で、情報不足もあったと思う。正しい判断ができている・できていないに関わらず、情報をそのまま受け取って判断してしまう部分もある中、地震が起こるところにわざわざ行く必要がないと言われればそうなので、そこをどうこう責めることはできない」と胸中を明かした。また「このご時世、何もしないまま何かあったら叩かれるので、行政の判断も理解はできる。ただそこに全員が納得できる基準がない。結局、それぞれの人が自衛した結果、ツケがこちらに回ってきた気がする」とも述べた。