コロナで流行った“帯状疱疹”のワクチンが公費補助に「費用対効果は良好」厚労省
厚生労働省の専門家委員会は、高齢者を対象とする帯状疱疹のワクチンについて、接種費用を公費で補助する定期接種に含める方針を決定しました。この内容について高藤医師に伺いました。 【イラスト解説】新型コロナ派生型「エリス」を振り返る [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
厚生労働省が決定した方針とは?
編集部: 高齢者を対象とする帯状疱疹のワクチンについて、厚生労働省が決定した方針を教えてください。 高藤先生: 2024年6月20日に開かれた厚生労働省の専門家委員会の議論の中で、「高齢者を対象にした帯状疱疹ワクチンを、公費で接種費用を負担する定期接種に含める」という方針を決定しました。 現状、日本で使われている帯状疱疹ワクチンは、1回だけ接種すればいい「生ワクチン」と2回接種する必要がある「不活化ワクチン」があります。ワクチン接種から1年後の発症予防率は4~9割で、神経痛などの合併症による重症化も防ぐ効果が確認されています。任意接種として扱われる現在の接種費用は生ワクチンで約1万円、不活化ワクチンになると合わせて約4万4000円かかります。これが定期接種になると、こうした費用の一部、もしくは全額が公費で賄われることになります。 厚生労働省の専門家会議で定期接種化に向けた検討が進められてきましたが、20日に開かれた会合で国立感染症研究所のワクチンの分析結果として、2つのワクチンについての有効性や安全性が確認されました。さらに、費用対効果についても有意義である点が認められ、定期接種に含める方針が了承されたとのことです。接種の対象年齢などの詳細については現時点で決まっておらず、今後の議論を踏まえて正式に決定される見込みです。
帯状疱疹ワクチン接種による効果は?
編集部: 帯状疱疹ワクチンを接種することで、どのようなメリットがあるのでしょうか? 高藤先生: 帯状疱疹ワクチンの効果については、2022年にニュージーランドのヴィクトリア大学ウェリントン校の研究グループが論文を発表しています。ニュージーランドで帯状疱疹ワクチンを接種した27万4272人と、条件がマッチする未接種者54万9870人を対象に研究を実施した結果、帯状疱疹で入院した718人のうち100人がワクチンを接種したグループで、618人は未接種のグループだったことが明らかになりました。 1000人/年あたりの帯状疱疹による入院率は、接種したグループが0.16、対照グループは0.31でした。帯状疱疹後神経痛で入院した180人中19人が接種グループで、161人は未接種グループでした。1000人/年あたりの入院率は0.031と0.080でした。この研究をさらに分析した結果、帯状疱疹での入院を予防するワクチンの効果は57.8%で、65歳以上の人では54.4%となり、また免疫抑制状態にある人に対する効果は51.5%でした。