三つどもえのJリーグ優勝争いに、セルジオ越後「広島が優勝に一番近いと思うし、物語としても美しいね」
早いもので今季のJリーグも残り4試合、優勝争いは広島(勝ち点65)、神戸(同64)、町田(同60)の3チームに絞られたといっていい。 まず首位の広島。過去2年連続3位という結果を残したスキッベ監督体制の3年目。監督のやりたいサッカーが選手に浸透していて、好不調の波が少ない。いいGK(大迫)がいて、ベテランの佐々木を中心にした最終ラインも安定。もともと守備は計算できる。 加えて今季は補強の人選、タイミングが的確だった。これに尽きる。夏に得点源の大橋、中盤の川村が海外移籍すると、すかさずアルスラン、パシエンシア、川辺と立て続けに獲得した。 特にふたりの外国人FWが当たりだった。すぐにチームにフィットし、シュートの精度も高く、期待通りに得点を重ねている。 広島は育成型のチーム。逆に言うと、せっかく育てた選手を引き抜かれてばかりという印象がこれまで強かった。でも、いつも選手を取られても黙っているチームが、今季はその穴埋めの補強にすぐ動いたのは良い驚き。新スタジアムで迎えた最初のシーズンになんとしても優勝したいという執念を感じる。広島が一番優勝に近いと思うし、物語としても美しいね。 広島といえば、かつては静岡、埼玉と並ぶサッカーどころ。僕も古い友人がたくさんいるんだけど、今年はチケットを取るのが大変だそう。そういう盛り上がりはうれしいことだよ。 2位の神戸もさすが昨季王者らしく、安定した戦いぶりを見せてきた。攻撃陣では大迫、武藤に加えて新加入の宮代も存在感を見せている。 ただ、ベテランが多いことと、外国人枠を余らせているのに夏に補強をしなかったのは気になるところ。 優勝したチームは編成をいじりにくいというのはわかるし、日本人選手もよく頑張っているけど、勝つための投資をしなかったことがどう出るか。少なくとも、負傷離脱した山口の穴は埋めきれていないと思う。 そして3位の町田だよ。J1初挑戦ながら5月には首位に立ち、ここまでリーグを盛り上げてくれた。 ただ、ここにきて勝てなくなった。直近の柏戦も最後にPKでなんとか同点に追いついたけど、内容的には相手に押されっぱなしだった。 ロングボール、カウンター主体の攻撃が相手に研究されたことに加えて、平河が海外移籍して以降、組み立てが単調になり、点が取れなくなった。 夏に相馬、中山、杉岡と実力者を補強したのは評価できるけど、3人とも期待ほどの活躍ができていないのは誤算だろうね。 そして何より、このチームには雑音が多すぎる。常に平和じゃない。PK時にボールに水をかける行為や、ロングスローの際にボールをタオルで入念に拭く行為が議論を呼び、ジャッジや対戦相手に対する黒田監督の発言や態度も物議を醸した。黒田監督は学校の先生だったとはいえ、カッとなりやすい性格なのだろう。 柏戦でPKになった場面では、監督だけでなく、コーチやベンチの選手まで第4審に詰め寄っていた。気持ちはすごくわかるんだけど、印象は悪くなってしまう。 せっかくリーグに新たな風を吹き込んでいるのに、味方ではなく敵を増やしているような感じで、ちょっともったいないね。 構成/渡辺達也