能登半島地震の被災地での学びを地域に還元、大学生ボランティア「日頃の備えの重要性伝えたい」
能登半島地震の発生から間もなく1年。被災地で学んだことを地域に還元する取り組みが、九州の大学生ボランティアの間で広がっている。学生たちは「いつ自分たちも被災者になるかわからない。日頃の備えの重要性を伝えたい」と話している。(今泉遼) 【写真】能登の被災地で「足湯」を提供する西九州大の学生たち=OKBASE提供
中村学園大、炊き出し調理再現
11月30日、福岡市城南区の中村学園大。管理栄養士らを養成する栄養科学部の学生が多く所属する「薬膳・食育ボランティア部」の部員たちは、グループ校の高校生らに被災地での活動を紹介した。
「調理には野菜から出る水分を使った」「残りが少ないのを見て遠慮する被災者に食事を受け取ってもらおうと、早めに別の鍋に取り換えた」といった活動で心がけたことを伝えた。
高校生たちと実際に、被災地で提供したシチューも調理。食材の廃棄を減らそうとブロッコリーの芯を細かく切り、食中毒を避けるため、作業時の手袋をこまめに交換したことなども説明した。
一緒に調理した中村学園女子高3年の女子生徒(18)は「福岡には『警固断層』があり、いつ大きな地震が起きるかもわからない。災害が発生したときには、自分も炊き出しに携わりたい」と話した。
同部メンバーは2~3月、ローテーションを組んで被災地に入り、石川県能登町の県立能登高を拠点に炊き出しなどを実施した。福岡に戻ってからは、学内などで報告会を行っている。
3年の小松若菜部長(21)は「現地は家屋が壊れ、道路が隆起してボロボロだったが、被災者には食事だけでも楽しんでほしいと活動した。被災地での経験を災害時に生かせるように、今後も他大学や次の世代に伝えたい」と力を込めた。
25年以上前に同部を創部した特別顧問の三成由美・同大名誉教授(72)(栄養学)は「学生たちは、食を通じて役に立ちたいと被災地で活動してくれた。この経験を今後の人生に生かしてほしい」と目を細めた。
1995年に発生した阪神大震災では、全国から多くのボランティアが被災地に入り、同年は「ボランティア元年」と呼ばれる。以降、各地で災害が発生するたび、多くの市民が救援に駆けつけた。