「ロックごっこ」の延長を、まだずっとやってるだけーー走り続けて33年、稲葉浩志が語るB'z、そしてコロナ禍の葛藤
人って、絶対わかりあえないところがある
2020年、日本をコロナ禍が襲った。稲葉とスティーヴィー・サラスによるユニット・INABA/SALASのツアーは中止を余儀なくされ、B'zは初の無観客配信ライブを5週連続で開催した。 そんな状況下で、稲葉もまた「分断」を肌で感じていたひとりだった。 「いくらでも怖がることもできたし、気にしない人もいたし、人の考えがわかれていく感じがすごくして。それが悪いほうに進んじゃうと、分断みたいなことになるんだと思うんです。ワクチンも、それぞれの考えやフィジカルな要因があるし、やっぱり基本的には尊重することではあるじゃないですか。でも、現実的には疎遠になっちゃう人もいると思うし」
コロナ禍の分断は、彼の考え方にも少なからず影響を及ぼした。 「人って、みんな考え方が違うんだなとか、絶対わかりあえないところがあるんだろうなっていうのは、こういうことがあると感じますね。『やっぱりそういうところはある』って思っておかないといけないのかな、と」 稲葉自身は、疎遠になる相手がいても、あまり焦らずに、いつかは連絡するタイプだという。ただ、コミュニケーションの難しさを感じる場面もあると話す。「B'zの稲葉浩志」ではない、「人間・稲葉浩志」の顔が浮かびあがる。 「僕もコミュニケーションは上手じゃないので、もしかしたら人から『気がつかない人だな』と思われているところもあると思うし。今、実際に行動に移る前に、余計な心配をする人が多い感じはしますよね。今、みんな携帯の字面上ではものすごくいろいろ心配するじゃないですか。あれも何か面倒くさいなと思うんで(笑)」
とにかく苦手な気持ちがずっとあった「いつかのメリークリスマス」
B'zのリーダー・松本孝弘は日米を往復しているため、日本への帰国時には隔離生活を余儀なくされた。その中で生まれたのが、アルバム「FRIENDS III」だ。92年と96年にリリースされ、B'zの代表曲のひとつとなった『いつかのメリークリスマス』も生んだ「FRIENDS」シリーズ。その25年ぶりの新作となる。 「普段のB'zよりも、主人公が過去を振り返ったり、自分を見つめたり、内省的な曲の比率が高いですね。今回はコロナの状況で、詞を見てみると、こもって何かを考えてる雰囲気がやっぱり強いなと」