「人と話さない」と“記憶系”の働きが鈍くなる脅威 脳を活性化させるためにいますぐできる対策は
このように、子どもの脳の成長にひとり言が大きく関わっていることは、明らかです。 ■しゃべらないと感情がなくなる 人は生まれてから「ひとり言」によって脳を発達させてきたわけですが、大人になるとその効能を忘れてしまうようです。 実際、患者さんと話をしていて愕然とすることがよくあります。 たとえば、「人と話すのが面倒くさい」と言って、ふだん会話らしい会話をしていない人が少なくありません。仕事はしていても、コミュニケーションが苦手だから口を利かないのです。
彼らの脳を画像診断すると、左脳のこめかみ部分にある「伝達系」脳番地が働いていないことがわかります。「伝達系」が働かないと、「感情系」も弱くなります。表情が乏しいのは、そのせいでしょう。 「これまでの人生で、感動したことを言ってみて」と聞くと、ずっと考えて、それでも思いつかない。言葉を発していないために、「感情系」とともに「記憶系」の働きもすっかり弱くなってしまっているのです。 当然ですが、自己認知力も弱いため、自分に対して自信を持つことも難しい。今はまだ何とか社会生活を送っているようですが、このまま放っておくと危ないと感じました。
日頃から、自分の声を出していないことが致命的です。声を出すことで自己確認=自己認知し、同時に自分の気持ちや感情を知ることができます。自分の感情や気持ちがわかって始めて、相手の気持ちや感情も理解できるのです。 「とにかく人と話をしてみよう。それが難しければ、ひとり言でもいいから話すようにしてみては?」とアドバイスするようにしています。 最近、他人に興味がない人が増えているといわれます。では、自分には興味があるかというと、それも乏しい。
何か思想的、信条的なものだとか、モットーがあって他人に興味がないのではなく、ただ単に脳が働いていないために、いろんなものに興味が持てない状態になっているにすぎません。これが押し進めば、抑うつ状態から本格的なうつ病になってしまうのは目に見えています。 とにかく、口とその周りの筋肉を使って、言葉を発することが大切です。それによって各脳番地を励起させるのです。 ひとり言は、それが一番簡単にできるツールだということです。