年金は「60歳から」繰上げ受給が得って本当?損益分岐点をシミュレーション
60歳から受給した場合と65歳から受給した場合の損益分岐点をシミュレーション
年金を60歳に繰上げ受給した場合と、65歳から受給を開始したときの損益分岐点を解説していきます。 厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均年金額は14万3973円です。 そのため、今回は年金月額を14万円と仮定し、60~90歳までの期間で損益分岐点を5年単位でシミュレーションしていきます。 ●60歳で繰上げ受給した場合 ・年金受給年齢が60歳の合計年金額:127万6800円 ・年金受給年齢が65歳の合計年金額:766万800円 ・年金受給年齢が70歳の合計年金額:1404万4800円 ・年金受給年齢が75歳の合計年金額:2042万8800円 ・年金受給年齢が80歳の合計年金額:2681万2800円 ・年金受給年齢が85歳の合計年金額:3319万6800円 ・年金受給年齢が90歳の合計年金額:3958万800円 ●65歳で受給した場合 ・年金受給年齢が65歳の合計年金額:168万円 ・年金受給年齢が70歳の合計年金額:1008万円 ・年金受給年齢が75歳の合計年金額:1848万円 ・年金受給年齢が80歳の合計年金額:2688万円 ・年金受給年齢が85歳の合計年金額:3528万円 ・年金受給年齢が90歳の合計年金額:4368万円 今回のシミュレーションでは、損益分岐点が80歳であることが確認できます。80歳よりも長生きした場合は、65歳で年金を受給した方がより多くの年金を受け取れます。 ただし、将来的に年金が目減りする恐れがある点には注意が必要です。次章でその理由を解説していきます。
将来的に年金が目減りする可能性があるのはなぜ?
少子高齢化や物価上昇などの理由から将来的に年金が目減りすると予想できます。資料を参考にしつつ、より具体的に解説していきます。 ●人口ピラミッドの変化 厚生労働省の「年金制度を取り巻く社会経済状況の変化」によると、2065年には65歳以上の人口が全体の約39%になると予想されています。 さらに、2023年度の合計特殊出生率は1.20で、過去の数値と比較すると減少傾向にあります。このまま少子高齢化が進めば、将来の年金受給者を支える現役世代も減るため、現状の年金制度が成立しなくなる可能性があるでしょう。 実際に2020年度の年金改正法では、年金の繰り下げ受給の年齢上限が70歳から75歳に引き上げられる法案が成立されました。今後の人口構成や年金制度改正を踏まえて、受給できる年金額が減ってしまうリスクを考慮しておく必要があります。 ●物価上昇によって年金受給者の家計を圧迫するリスク 年金額は物価変動率によって毎年改正されます。そのため、物価が上昇すれば年金額も上がる仕組みになっています。しかし、少子高齢化の影響による現役世代の負担を軽減するために年金額の伸びを調整する仕組みを導入しました。 この仕組みは「マクロ経済スライド」と呼ばれており、2004年の年金制度改正で導入されています。マクロ経済スライドによって年金財政の悪化を回避できるものの、物価上昇に応じて年金額が上がりにくくなっているのが現状です。 では実際に、社会保障給付をメイン収入として暮らしている65歳以上の単身無職世帯の家計収支を見ていきましょう。 上記の家計収支を参照すると、3万7916円の赤字が発生していることが確認できます。3万円ほどの赤字であれば、消費支出のうち割合の大きい食料や交際費の支出を節約することで黒字にできるかもしれません。 しかし、将来的に年金を受け取る予定の方が同じ家計収支で生活できる保証はありません。少子高齢化による年金受給額の減少や、さらなる物価上昇などのリスクも考えられます。そのため、将来の不確実性を踏まえたうえで、いつから年金を受給するのか現役世代のうちに計画しておくのがおすすめです。