旅の〝ウィンウィン〟な新形態 「おてつたび」が農家と旅行者をマッチング
地域に訪れる旅行者は、経済効果を生むだけでなく、人手不足に悩む農業現場の働き手にもなり得る。新型コロナウイルス禍以降の国内旅行の需要が回復しつつある中、各地の自治体やJAなどは、労働力としての受け入れ体制を整えたり、独自の体験メニューを検討したりして、旅行者の取り込みに工夫を凝らす。 【グラフ】国内旅行消費は6兆円まで回復
かんきつの働き手確保 産地支える「おてつたび」 JAひろしま三原地域本部
収穫シーズンに入った尾道市のかんきつ産地で、旅行者が農家に出向き、繁忙期の作業を支えている。旅行者と農家をつなぐのはマッチングサイト「おてつたび」=。JAひろしま三原地域本部などが事務局を担い、人手不足に困る地域と、働きながら旅行がしたい人を引き合わせる。今シーズンは市内のかんきつ農家3戸が利用。人材確保の一手として定着している。 「農業やかんきつが好きな人が多く、実の取り方も丁寧」。同市瀬戸田町のかんきつ農家、原田充明さん(40)は、同サイトを通じて受け入れた旅行者らの手つきに感心する。 原田さんの園地で昨年から、かんきつの収穫に携わる廿日市市在住の大学生、岬姫女さん(21)は「実を傷つけないよう一つずつ丁寧に切り取る作業は、普段の生活ではできない経験。自分の財産になる」と話す。 レモンやミカンなどを4ヘクタールで栽培する原田さんは「人手が確保でき、作業負担が減っている。今後も活用したい」と話す。 原田さんは本年度、既に14人とマッチングが成立。翌年3月の収穫シーズン終了まで受け入れる予定だ。旅行者は1週間から1カ月程度、市内の宿泊施設に滞在。午前8時から作業し、週1回の休みに地域を観光する。 尾道市のかんきつ産地で、「おてつたび」の旅行者がかんきつ類の収穫に携わるようになったのは2020年から。市とJR西日本、JAひろしま三原地域本部が連携し、同サイトを活用。農家と旅行者をつないでいる。 JA三原地域本部柑橘(かんきつ)事業部の野田泰三部長は「リピーターも多い。農繁期の労働力確保の選択肢として期待している」と話す。