リバプールは今季最低レベルだった…。とくに酷かったロバートソン、指揮官はSB問題をどうするのか【分析コラム】
プレミアリーグ第12節、サウサンプトン対リバプールが現地時間24日に行われ、2-3でアウェイチームが勝利した。最後はモハメド・サラーのゴールで劇的な逆転劇を演じたリバプールだったが、その試合内容は今季最悪レベル。その中でも特に酷かったのは…。(文:安洋一郎) 【動画】サウサンプトン対リバプール ハイライト
●リバプールが“ミス合戦”を制する この試合を一言で表すのであれば、“ミス合戦”という表現が最適だろう。敵地で勝ち点3を持ち帰ることに成功したリバプールだが、正直に言ってこの結果はかなりラッキーだった。 両チーム合わせて5ゴールが生まれた試合で大きなミスが絡んでいなかったのは、サウサンプトンのカウンターが決まった56分の得点のみ。それ以外の4つのゴールシーンは、すべて相手チームの“致命的なミス”が起きていた。 ラッセル・マーティン監督が志向するボールを繋ぎたいサッカーと、センターバックの質がテイラー・ハーウッド=ベリスを除いてミスマッチなサウサンプトンからすると、ビルドアップでのミスはいつもの光景だ。 どの試合でも自陣ボックス近辺でハイリスクを通り越した綱渡り状態でのパス回しを行い、自分たちに流れがある中でも一つの致命的なミスが失点へと繋がって流れを失う。今節リバプール戦も例外ではなく、ヤン・ベドナレクの負傷に伴い3バックの中央で起用されたフリン・ダウンズの意図がわからないパスミスから試合が動いた。 意外だったのは、この先制点がリバプールの選手たちを緩めたこと。特に最終ラインの選手たちが集中力を欠く軽率なプレーを連発し、33分にはアンドリュー・ロバートソンのクリアミス、39分にはイブラヒマ・コナテのパスミス、40分にはフィルジル・ファン・ダイクの不用意な持ち運びからピンチを迎えた。 そのうちの一つである40分のシーンでは、オランダ代表DFのロストをキッカケにロバートソンがPKを献上している。 文脈上はロバートソンがファン・ダイクのミスのツケを払わされたようにも捉えられるが、彼のファウルも防げた不用意なものだった。 ●試合を通して厳しかったロバートソン アルネ・スロット体制で序列を上げているコスタス・ツィミカスが負傷したことによって、必然的に左SBのスタメンに名を連ねたロバートソンだったが、合格点からは程遠い最悪のパフォーマンスに終わった。 特に酷かったのが守備での振る舞いだ。相手選手とマッチアップしたシーンでの守備対応の選択肢が、素直に前へ突っ込むことしかなく、試合を通してサウサンプトンの18歳タイラー・ディブリングらに翻弄され続けた。 先述したPK献上のシーンは、ファン・ダイクのロストが原因としてあるとはいえ、ロバートソンの対応には疑問の余地が残る。 ディブリングがボックス内に向かってボールを運んだ際に、サウサンプトンの選手は誰も彼のことをサポートすることができていなかった。一方のリバプールの守備陣はカバーに間に合っており、状況としては1対5と明らかに数的優位だった。 ディブリングの利き足が左足ということも考えると、リバプール側からすると彼を外に逃がせば十分に対応できた可能性が高い。 この状況において、イチかバチかで足を出してPKを献上するのは、守備者としてあまりにナンセンス。相手選手との駆け引きがない状況で、一発のタックルでボールを奪おうとする対応には不用意という言葉以外見つからない。 サウサンプトンの2点目のシーンでもロバートソンは、アダム・アームストロング相手にプレーの選択肢を狭める守備対応ではなく、一発でボールを奪いにいって簡単に剥がされて失点に関与。こうした軽い守備対応が試合を通して散見された。 ●攻撃面での貢献度も低いロバートソン 仮に保持の局面でチームに好材料をもたらすことができるのであれば起用する理由も生まれるが、現状のビルドアップとファイナルサードでの貢献度の低さを踏まえると、厳しいものがある。 あくまでもロバートソンは“使われる側“の選手で、周囲の選手を活かすプレーが得意とは言えない。となれば、周りへのサポート意識がより強いツィミカスの方が、チームを活性化させる上では高い貢献度が見込める。 このまま30歳のスコットランド代表DFが攻守に厳しいパフォーマンスを続けるのであれば、リバプールは左SBの補強に動く必要があるだろう。 もう一人の左SBであるツィミカスも28歳で、ユルゲン・クロップ体制でのラストイヤーだった昨シーズンに左SBとして好プレーを披露していたジョー・ゴメスも序列が低いまま。この試合のパフォーマンスでロバートソンと交代出場しなかったことを踏まえると、そもそも左SBとしては計算されていないのかもしれない。 この左SB問題をスロット監督がどのように捉えているのかは、今週行われるレアル・マドリードとマンチェスター・シティとのビッグマッチで明らかになりそうだ。 ベストな選択肢はツィミカスが怪我から復帰することだが、それが叶わなかった場合の選択肢がロバートソンの継続路線になるのか、それともゴメスをはじめとする別の選手起用があるのだろうか。修正力に定評がある指揮官が目先で抱えるこの課題に、どのように向き合うのか要注目だ。 (文:安洋一郎)
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