ファルケンが世界一過酷な「ニュル24時間レース」に参戦して25年! 歴史を振り返る貴重映像が公開中です【Key's note】
過酷な24時間耐久レースに挑戦を開始して25年
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「ニュルブルクリンクに挑むファルケン」です。世界一過酷と言われるサーキット、ドイツ・ニュルブルクリンクで毎年行われる24時間レースにおいて、1999年から挑んでいるのが「ファルケン」です。2024年はニュルブルクリンク参戦25周年ということで、YouTubeで動画が配信されました。そこで、木下さんの思い入れのある1台、全日本GT選手権(現スーパーGT)GT500クラス仕様トヨタ「スープラ」で参戦したときの思い出を振り返ります。 【画像】貴重な当時の映像から「GT500スープラ」がニュル24時間を戦ったワンシーンをお届け(11枚)
長年培ったノウハウを注ぎ込みGT500マシン用タイヤを開発
「そんな無茶ですよ」 かれこれ四半世紀も前のことなのに、ファルケンタイヤの挑戦に対して告げた否定的な言葉を、鮮明に覚えています。 ファルケンタイヤがニュルブルクリンク24時間レース参戦をスタートしたのは1999年のこと。僕はすでに1990年からニュルブルクリンクでのキャリアを積み重ねていたこともあり、その新プロジェクトのドライバーとして招聘されました。ファルケンは初年度にR33型日産「スカイラインGT-R」で参戦し、それが思わぬ好成績(総合6位)だったその勢いで、翌2000年は全日本GT選手権(現スーパーGT)の「GT500スープラ」で参戦したいと言い出したのです。 そのプロジェクトが立ち上がっていることを聞かされたときに、冒頭の感想が口をついて出たというわけです。 GT500は驚くほど高性能であることに疑いはありません。僕も自らそのマシンで全日本GT選手権GT500クラスを戦っていましたから、戦闘力の高さは熟知していたつもりです。だからこそ、無謀な挑戦に思えたのです。 それまでファルケンは、GT500マシン用のタイヤを開発した経験がありませんでした。国内のツーリンクカーレースでは優秀な成績を残していましたが、GTマシンは別物です。圧倒的に経験値が不足していました。実績もありません。 しかもサーキットは世界一過激とされるニュルブルクリンクです。例えるならば、高校野球で好成績だからといって、いきなりメジャーリーグに挑戦するようなものです。まともに走るとは思えなかったのも理解してもらえると思います。 ですが、ファルケンは成功させてしまいました。日本車に履く日本のタイヤとして初めて、総合3位を快走したのです。 残念ながら、ドライバーのミスによりクラッシュ、リタイヤしてしまったのですが、もしあのまま走り続けていれば……。勝負事に「タラレバ」はありませんが、少なくともタイヤの性能は証明されたといっていいでしょう。 そんな顛末は、ニュルブルクリンク参戦25年を記念して制作したプロモーションビデオで語られています。
近年はポルシェで参戦し勝利を狙う
GT500マシンで性能を確認したファルケンは、さらに総合優勝を目指して歩みを進めます。最近ではポルシェ「911 GT3 R」でトップ争いを演じているのです。 いまだにニュルブルクリンク24時間レースでの勝利はありませんが、耐久シリーズでは何度か優勝を飾っています。 僕は今、トーヨータイヤでニュルブルクリンク耐久シリーズに参戦しています。コース上でニアミスすることもあります。ライバルですから表立って応援することはできませんが、同じ日本製のタイヤとして気持ちが通じているのも確かです。お時間があるときに、ぜひプロモーションビデオを鑑賞してみてください。
木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
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