【インタビュー】愛内里菜、24年のキャリアを経ていま最強になったワケ
愛内里菜が最強の愛内里菜楽曲「+INSPIRE」を引っ提げて、帰って来た。 12月10日発売のシングル「+INSPIRE(プラス・インスパイア)」は、愛内里菜の真骨頂と言えるハードなサウンドに、キュートながらもパワフルな歌声がグルーブするハードロックチューンだ。ギターソロの代わりに激しくメロディを駆け上るバイオリンのサウンドもフィーチャーされ、往年の魅力に現在のサウンド志向がアップデートされた、最新かつ最強の愛内里菜だ。 2025年3月にデビュー25周年を迎える愛内里菜だが、25年の間に音楽業界は大きく様変わりし、音楽制作の環境も変貌を遂げた。メガヒットが時代を牽引した2000年に華々しくデビューを飾った彼女にとって、2024年の音楽事情はどういうものか。酸いも甘いも噛み分け、甲状腺疾患による引退も余儀なくされながら、山あり谷ありのアーティスト活動を重ねてきた彼女の目に映る、理想のアーティスト像とはどういうものか。話を聞いた。 ──12月10日に発売となるシングル「+INSPIRE」は、14年ぶりのリリースということなんですね? 愛内里菜:2018年に自分でRunning Rabbitというインディペンデントレーベルを立ち上げて作品をリリースしてきているんですけど、2010年に1度マイクを置いてステージを降りたので、メジャーリリースというのは引退後14年ぶりになります。 ──2010年の引退は、大きな衝撃でしたね。 愛内里菜:もう相当な覚悟でした。ファンの皆さんにとにかく申し訳ないという気持ちと、でもこのままだとファンの皆さんに満足してもらえる音楽が届けられないっていうのも正直な気持ち。「自分がやりたいことって何なのか」と自分を見失ってる状況でもあったから、まずは自分探しをしなきゃ伝えられるものが何もないっていうところでは、今振り返れば自分の中で一旦線を引いたのは正しい選択だったなって思ってます。 ──学生のままデビューを果たしたわけですが、当時はどんな夢を描いてのスタートだったんですか? 愛内里菜:あの頃は小室サウンドが世の中を席巻していて、音楽的にもファッション的にも憧れるものがありました。当時女子高生の中でカラオケが流行っていてオーディション番組もたくさんあったので、テレビに出て歌うことへの憧れがものすごく自分の中で強かった。きらびやかな衣装を着て華やかな歌を歌って、テレビに出たい…っていうのが自分の目標で。 ──夢のような幸せいっぱいの世界が待っている、と。 愛内里菜:そう、ただただ憧れて「私もあのステージに立ちたい」「あんなふうに表現してみたい」っていうのが1番。とにかくがむしゃらにオーディション受けていました。 ──で、とんとん拍子にデビューへとつながっていった、と。 愛内里菜:いえ、実はいろんなレコード会社へデモテープを送ったりオーディションを受けていたんですけど、いつも準優勝ばっかりで、なかなかその優勝になれない自分だったんです。 ──何が足りなかったのでしょう。 愛内里菜:そこなんですよ。「私には何が足りないんだろう」って。当時はビジュアル面もとても重要で、可愛い子がとにかく勢ぞろいするし、段階を上がっていくとスタイルも顔も整った子たちがたくさん並んでいるんです。「やっぱ見た目かな…、歌では負けてないんだけどな」って思いながら、一生懸命メイクを頑張ってました。 ──「自分は歌が歌える」と自覚を持ったのはいつ頃なんですか? 愛内里菜:歌は好きっていうのはずっとあったんですけど、カラオケに行って褒められることがあった高校生の時ですね。ノリノリの曲を歌ってみんなから喜ばれて「うまいやん」ってちやほやされるんですけど、ある時バラードを歌っている時に親友から「あんたの声って安心するというか、ほっとするよね」「癒される」って言われたんです。「私ってそんな一面を持ってるんかな」って思って、であれば、人に癒しを与えられるような、温もりを与えれるようなことを歌で伝えられる歌手という仕事ができたらいいなって思い始めたのがきっかけなんです。 ──声と歌を褒めてもらう経験がそこにあったんですね。 愛内里菜:歌は練習でなんとかなる部分だけど、声質というのは自分にしかないものだから。今までは自分の声が嫌いだったんです。「声が高すぎる」とか「ぶりっ子してる」とか、女の子から見て気持ちいい声ではないみたいで、学生の頃はそれでいじめにあってました。男の子に媚びを売っている感じがイライラするって。それで自分の声が嫌だったんですけど、初めて親友に「あんた、歌ったらめちゃくちゃ癒されるよ」って言ってもらえたことが嬉しくて。ちょっと自信がついたというか、こんな自分の声でもいい一面もあるんやって思えたのが嬉しかった。それでオーディションに受けてみようかな、友達の言葉を信じてみようかなって思えたのがきっかけなんです。 ──デビューから24年、2025年で25周年を迎えますが、この25年の間に音楽業界は大きく様変わりしたと思いませんか? 愛内里菜:思います。ほんとにもう、前に出ていくアーティストの形も変わったし、流れも変わった。歌手だけじゃなくて、作曲家、編曲家、バンドもみんな状況が変わっちゃった。 ──アーティストに求められるスキルって、パフォーマンスだけではなくなりましたし。 愛内里菜:ひしひしと感じています。だからここに来るまでも色々チャレンジしてきました。YouTubeや生配信で、すっぴんでメイクもせず子供が後ろで泣いてたらちょっと待ってって子供抱きながら配信したりだとか、今までの愛内里菜だったら絶対に見せてこなかったことまでもしなきゃって思っていました。今までのスタイルじゃ伝わらないというか、今までのプライドだけでやっていくのはもう違うなって思いました。コロナ前とコロナ後でもすごく変わっちゃったし、この数年で愛内里菜っていうものを自分の中で凄く変換してきたと思っています。 ──なるほど。 愛内里菜:私的には素になれたというか、気持ちは楽になったし無理がなくなった。昔はテレビを通して「愛内里菜にならなきゃ」というのが自分の課題だったから、演じる楽しさもあったけど、でも自分の思いとどこかずれていく。音楽を作っていく中で、そこがどんどん見えなくなっていったんです。今は、人間性を見てもらえるという点はいい部分だと思っています。 ──演じるべき愛内里菜のアーティスト像というのはどういうものだったんですか? 愛内里菜:あんまりテレビには出ないで、ちょっと不思議なイメージで、ツンとした感じでロックを歌ってて、でも喋るとなんか声が変わってて…という決まりきったイメージ。決まりきったイメージの中だけで勝負しなきゃいけないとしたら、私は再始動できていなかったかもしれないです。自分がやってこれなかったことのパーソナル的なものがまだたくさんあるので、そこでまた新しい表現ができるんじゃないかなという期待があって、そこでまた歌を歌いたい自分が生まれているんだと思っています。 ──人生を積み重ね、学んだことで得た感覚ですね。 愛内里菜:家の中ですっぴんでやる配信も嫌いじゃなかったし、子育てでバタバタしながら、いいコメントも悪いコメントももらいながらやったことも、今までになかった一面を見せていくことはそんなにストレスではなかったんです。それをファンのみんなが普通に受け止めて、わかってくれていた。それでちょっと新しい扉が開いたんです。次はもっと表現していけるという気持ちと、もうちょっと歌で頑張ってみてもいいかなっていう思い。 ──やっぱりファンに支えられてきたところが大きいんですね。 愛内里菜:1番ですね。だからもう本当にごめんねっていう気持ち。心残りだったファンが帰ってきてくれて支えてくれた。みんなに恩返ししながらさらに広がっていくようなことをしたいんですよ。 ──逆に、やっぱり何も変わらないという部分はどこですか? 愛内里菜:私は歌が好きなんだなと思うところです。昔よりももっと歌が好きになってステージに立って歌っています。昔は、歌う時に色々考えすぎていました。「ただ歌が好き」と思って歌えばそれでいいのに、自分で何を背負ってるかわかんないけど、それだけじゃダメな気がして。でもそうすると声は出なくなるし、届いてるのかもわからなくなって、そうするとステージに立ってる自分っていうのが、あまり好きじゃないというか、こんなんじゃないのに、あんなんじゃないのにって思いが募ってしまう。きっと、自分の中でうまく歌えてない気持ちがそうさせているんでしょうね。 ──それはしんどい。 愛内里菜:今は昔よりも高音も出てないかもしれないし、キーも下がったかもしれない。もしかしたら表現が劣っているところもあるかもしれない…けど、でもそれよりはるかに私はもっと歌を好きになって、もっとみんなに感謝ができて歌えている自分がいる。歌っている時の自信は昔よりあるんですね。 ──こういう心模様は、アーティストのみんなが通る道でもあるのかな。 愛内里菜:同じことを続けることの難しさっていうところに、迷走してしまうことがありますよね。歌詞を書くにしても、作曲にしても、歌うにしても、みんなそこは通るんじゃないかな。でも、何か吹っ切れる経験をした時、それが自分の中でストーンって落ちた時に声に変わるというか、表現に変わる。その経験をどこでするかなのかな?って思います。私は、その引退っていうのがあって、引退後に支えてくれたメンバーがいて、仲間と乗り越えてきた時間があってのことです。歌声ってほんとにメンタルだなって思うんです。昔の方がよっぽどレッスンに行っていたし、どんなに技術を教わっても、メンタルひとつでダメになる。そこをわかった上で今があるので、自分の中で気にすべき点と気にしないでいい割り振りができるようになったのかもしれない。昔はいろんなことを気にしながら、それが全部歌声に出ちゃっていたから。 ──今の愛内里菜は最強なんですね。 愛内里菜:そうですね、最強になりつつあるのかな(笑)。 ──。12月10日に発売となるシングル「+INSPIRE(プラス・インスパイア)」はかなりパワフルな曲ですが、ポップでもなくバラードでもなく、こういうハードなサウンドになったのは、今の心境を表しているということですか? 愛内里菜:最新の自分の気分でオーダーした曲です。実は2023年から今の愛内里菜の音楽プロデューサーでもある作曲家の石井健太郎さんと一緒に作り始めて、「こんなの歌いたいんだよね」って今までにないちょっとハード目でワビサビがあるような大人のロックで、でもギターのソロではなくバイオリンのソロで、高音の張り詰めた感じと低音と重さのギャップを1曲の中で表現したいという。サビは早くてもBメロでストンとバラードのように落ちたりして、いろんな意味でメリハリのある曲。目の前でピアノを弾いてもらいながら、「いやそのテンポには行かないで」「そこまで刻み込まないで」とか言いながら、やりたい放題で作った曲です。 ──いいですね。 愛内里菜:歌詞は、今年の6月に開催された<デビュー24周年上海ライブ~Brilliant Queen~>で受けた感動がそのまま影響しています。海外での初ライブは想像以上の盛り上がりで、1曲目からみんなが合唱なんですよ。Aメロから間奏のコーラス部分までみんなガンガン歌うんです。熱量がすごくって、1曲目始まったところからもうスタッフ大泣き(笑)みたいなインパクトを受けて、それがインスパイヤーのひとつになった。ものすごい大きなエネルギーを受けて帰ってきたわけで、そんな中で書き上げたのが「+INSPIRE」の歌詞でした。今自分が活動してる感覚とか感触とか、みんなからいただいているインスピレーションとかエネルギーを詰め込んだものなので、この1曲を聴いてくれたら今の愛内里菜を感じてもらえると思っています。 ──これからの活動がより楽しみになりますね。 愛内里菜:メジャーリリースということで、多くの人の目に留まるかもしれないし、リリースイベントもまた新しい経験だなと思ってたくさん行います。すごく楽しんで歌っているっていうことが、以前よりも増してみんなに伝わってくれたらいいなって思ってます。 ──これからですね、次の25年に向けて。 愛内里菜:19歳でデビューした時は、「20代が全てや」「もう20代のうちに全てやらせてください」って、30歳を過ぎて歌っている自分なんか考えられなかったけど、それがこうやって44歳になっても皆さんに助けてもらいながら活動できているんで、確かにこのまま行くと60歳もまだまだ声が出る限りはできるのかなと思うので、なんせかっこいい存在で「いい年とってんな、愛内」と言われるように変わっていきたい。楽しみに頑張んなきゃ。 ──体調は万全ですか。 愛内里菜:万全です。状態も落ち着いていて、声も以前よりも出やすいと思っています。 ──甲状腺の病気っていうのは、声に直接影響があるんですか? 愛内里菜:あります。ホルモンの病気なんで女性に特に多いんですけど、甲状腺が腫れ上がるので、途端に詰まってくるというか声も出ない。ホルモンのバランスが崩れているから、動こうと思っても身体が思うように動かないし、通年のだるさがあって、ひどい方だと立ち上がれなくて私生活も支障出てしまうんです。 ──それはメンタルもやられてしまいますね。 愛内里菜:そうなんです。メンタル=声なので、どんなに身体が健康でもメンタルがやばかったら本当に歌えなくなって、さらにメンタルがやられるんです。でも私のせいでスケジュールが崩れるとスタッフにも迷惑がかかるし、先延ばしにしてもリミットもあるので。私は甲状腺だったけど、ポリープだったり耳のことであったり、いろんな体調をみんな抱えていて、辛いことがあると思うんです。まずメンタルがやられていくしんどさがありましたね。 ──音楽業界は絶好調でしたから、そんな闇があるとは思いもしませんね。 愛内里菜:そうですそうです。夢を持っているアーティストがいて、それを支える会社があってスタッフがいる。でもどうしても生物というか生身の人間なんで、いろんな波がありますよね。あの頃は「きらびやかな人でいたい」っていう私だったから、自分の中で休むことも許されなかった。過呼吸で倒れたりとか、実は何度も病院に行っていたけど、そんなことさえ言ってはいけないと思っていましたから。 ──そうですよね。昭和のアイドルなんておしっこもうんちもしない存在でしたからね。 愛内里菜:風邪ひいても言っちゃダメみたいな、そういう人間味を見せる必要がない。そういう意味では、人間らしさを出していいんだっていうところが、すごく変わりましたね。愛内里菜として背負うものが少なくなりました。 ──ひと皮もふた皮も剥けた愛内里菜は最強ですね。 愛内里菜:もちろん音楽が基本にあるんですけど、皆さんに楽しんでもらえるようなエンターテイメント性を上げた活動もして、国内外でもっともっと活動を広げていきたいです。もうほんとに元気になって舞い戻ってきたんで、もう心配をかけないように頑張りたいと思ってます。 取材・文◎烏丸哲也(BARKS) 愛内里菜「+INSPIRE」 2024年12月10日発売 1,200円(税込) <愛内里菜2024中国2都市ツアー(成都&北京)> 2024年12月21日(土) @成都 正火艺术中心 6号馆 入場 VIPチケット18:40 / 普通チケット19:00 演出 20:00~21:30 撮影 21:45 物販 16:30~22:30 2024年12月22日(日) @北京疆进酒OMNISPACE 入場 VIPチケット18:10 / 普通チケット18:30 演出 19:30~21:00 撮影 21:15 物販 16:00~22:00 各チケット ・普通チケット 280元(記念チケット) ・VIPチケット 580元 (サイン手渡し+1v1記念撮影+優先入場+記念チケット) <RINA AIUCHI NEW YEAR LIVE in NAGOYA『Starting Over』> 2025年1月4日(土) @名古屋「CIRCUS」 昼公演:開場13:30 / 開演14:00 夜公演:開場17:00 / 開演17:30 ※物販は昼夜各公演開場の30分前より先着順にて行わせていただきます。 ・サイン付チェキを各公演とも数量限定でご用意 ・購入数制限はありません。 ・各公演開場5分前になりましたら物販お並びのお客様も一度ご退出いただき、開場時間になりましたら整理番号順にて入場いただきます。 ■チケット料金 前売 6,500円 当日 7,000円 ※両チケット共、+1D(600円)入場時にお支払いいただきます
BARKS