“内部告発”後に解雇され「無効」主張も…会社は「私憤を晴らす目的」と反論 裁判所が「従業員の訴え」を認める基準とは
裁判所の判断
Xさんの勝訴である。 ■ 週刊誌へのリーク(改ざん疑惑) 裁判所の判断の概要は以下のとおりだ。 ・書面の記載内容から、組合が漁獲物の流通量を確保するために、放射性物質の数値を実際よりも低い値で公表したのでは...とXさんが疑念を抱くことは必ずしも不合理ではない ・故意に虚偽の情報を提供したものではない ・およそ合理的な理由なく組合の信用を毀損する行為ではなかった...etc ■ 検察庁への告発(補助金の不正受給疑惑) 裁判所の判断の概要は以下のとおりである。 ・カラ出張を疑うことも全く不合理なことであったとまではいえない ・補助金の受給に不正な点があるのでは...と疑うことは不合理ではない ・告発が全く根拠を欠く不当なものであったとは認められない 会社は「Xさんは上司に対する私憤を晴らす目的で告発した」と主張したが、裁判所は「告発が、上司に対する私憤を晴らすという個人的な目的によるものとあったとはいえない。告発内容がおよそ合理性を書いていたということはできず、公益通報としての側面も有していた」と判断した。 ■ バックペイ 裁判所は会社に対して、約1000万円(約3年分の給料)をXさんに支払うよう命じた。このように、解雇が無効と判断され、過去にさかのぼって給料がもらえることを「バックペイ」という。具体的には【解雇された日から → 訴訟になって → 判決が確定する日までの給料】のことだ(民法536条2項)。
最後に
会社や上司を陥れる目的でウソの情報を外部にリークすることは言語道断であるが、今回のように、しかるべき書類を根拠に【合理的な疑い】を持った上で、会社に改善を申し入れても動かないようであれば、情報を提示して外部の力を借りることも違法とはならないと考える。 林 孝匡(はやし たかまさ) 【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。情報発信が専門の弁護士です。 専門分野は労働関係。好きな言葉は替え玉無料。
林 孝匡