ハマス・イスラエル戦争から1年・中東情勢の行方、人質解放も進まず、戦局は多方面へ
ここで見落としてならないのは、10月1日、イランからの攻撃とほぼ同じタイミングで、テルアビブのヤッフォで銃撃・刺殺テロが発生したことである。2人のテロリストが7人を殺害、17人を負傷させた。 10月3日、ハマスとカッサム旅団が、イランの攻撃に合わせた襲撃だったと声明を発表した。 ■西岸地区でも見られるテロ集団の動き イランの支援を得て、ガザ地区のハマスだけではなく、西岸地区でもテロ集団が蠢(うごめ)き出している。中東報道研究機関MEMRIは8月中旬、次のような記事を掲載した。
この2年間、西岸地区北部を発端とするテロの脅威は着実に増大している。ハマス、イスラム聖戦、ファタハの軍事部門アルアクサ殉教者旅団が、西岸地区北部で、それぞれ陣地構築を進めるとともに、協力体制を固めつつある。これにより、パレスチナ自治政府(PA)はこの地域における統制力を失い、統治体制が崩れつつある。武装テロ集団はイランの支援を受けてインフラ作りを進めつつあり、2023年10月7日にイスラエル南部でハマスが行った攻撃と同様の攻撃を実行する意思さえ表明している。(MEMRI Special Dispatch No.11507)
イスラエルでは10月3日、ユダヤ暦5785年の新年を迎えた。10月12日は最も神聖なヨムキプール(贖罪日)、10月17~23日はスコット(仮庵祭)、そして10月24日にはシムハット・トーラー(モーセ五書を1年かけて読み終わる喜びの祭り)と祭日が続く。 2023年10月7日、ハマスのテロ攻撃があったのはこのシムハット・トーラーの祭日だった(ユダヤ暦は太陰太陽暦なので、西暦とのズレが生じる)。 筆者は10月のお祭り期間に惨事が起きないことを祈っている。イランを筆頭に、自ら「抵抗の枢軸」と名乗るレバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、そしてガザ地区のハマスに加えて西岸地区のあらゆるテロ組織と、イスラエルは何正面もの対テロ戦争を強いられている。圧倒的な軍事力を誇るイランやヒズボラだけではなく、西岸の動きにも要注意である。
谷内 意咲 :ミルトス代表