「毎日コツコツと…」アルビレックス新潟、橋本健人の転機は“昨年1年間”だった。レジェンドと出会い、もらった言葉【コラム】
●「行けそうだねって話はしていました」
相手エースのマテウス・サヴィオとジエゴの左サイドは強力で、新潟の右サイドは守勢に回る時間が長かった。 それでも左の橋本は要所要所でスペースを見つけ、スルスルと前に上がり、クロスやサイドチェンジを入れていく。新潟のチャンスのほとんどに背番号42が関与していたと言っていい。 「前半は相手がミドルブロックですごくキレイな4-4-2で構えてくる中で、自分たちがポジションチェンジをしたり、僕が一度、前に上がって後ろが3枚になるような形でズレを作ろうと試みた。それで行けそうだねって話はしていました」と橋本自身も前向きな感触を抱いたという。 0-0で迎えた後半。新潟はさらに攻撃を加速させていく。 松橋監督はルヴァン決勝と同様に、20分過ぎから長倉幹樹と小見洋太というジョーカーを投入。小見が流れを引き寄せるような推進力を見せ、そこまで効果的に侵入できていなかったアタッキングゾーンの攻略ができそうな雰囲気も漂った。
●起死回生の同点弾。中村俊輔からの言葉がヒントに
その矢先だった74分、柏のエース・細谷真大に左CKからヘッドを決められ、新潟は窮地に追い込まれる。新潟の守備に生まれてはいけないスペースがポッカリ空き、そこに入り込まれてしまったのだ。 この時点で札幌は湘南ベルマーレに1-1、磐田はガンバ大阪にビハインドという状況であり、新潟は負けると残留争いの泥沼に巻き込まれるリスクが高くなる。それだけは回避する必要があった。 そんな崖っぷちに追い込まれた状況で、橋本は大仕事をしてみせる。 後半アディショナルタイムのラスト1分を切った段階で、左サイドの高い位置を取り、星雄次からパスを受けると、寄せてきた土屋巧を鋭いフェイントで切り返し、左足で大外目がけてクロスを入れた。これを小見が頭で折り返し、ペナルティエリア内に斜めに入り込んできた藤原奏哉が右足を一閃。起死回生の同点弾を叩き込んだ。 「相手が飛び込んできたし、それまでは1回も切り返さないで、そのままクロスを上げていたんですけど、あの時は切り返しましたね。 よく中村俊輔さん(現横浜FCコーチ)が『前半はいっぱいクロスを上げて、後半は切り返すんだ』って話をしているのを昨年聞いて、参考にしました。そういうことを言うと、たぶん(メディアの人に)そこを使われちゃうんで、俊さんに申し訳ないんですけど…」 本人は苦笑しつつ話したが、Bチームで練習していた昨年、偉大なレジェンドからもらったアドバイスが重要な局面で出たのは事実。同じレフティだからこそ、中村俊輔コーチから受けた影響は大きかったのだろう。