「毎日コツコツと…」アルビレックス新潟、橋本健人の転機は“昨年1年間”だった。レジェンドと出会い、もらった言葉【コラム】
2024年明治安田J1リーグ第36節が9日に各地で行われ、アルビレックス新潟は敵地で柏レイソルと対戦した。J1残留をかけた重要な一戦はドローに終わり、両チームともに命運は次節以降に持ち越された。このゲームのあと、起死回生の同点弾のきっかけを作った新潟の橋本健人が、得点シーンの背景を明かした。(取材・文:元川悦子)
●「自分たちの物語は必要ないし、とにかく勝ちたい」と指揮官は強調
J1残留争いもいよいよ佳境。ラスト3試合となった第35節時点では、最下位・サガン鳥栖のJ2降格がすでに決定。19位・北海道コンサドーレ札幌が勝ち点33、18位・ジュビロ磐田が同35、17位・柏レイソルが同39、16位・アルビレックス新潟が同40という並び。磐田の残り試合がひとつ多いことを考えると、柏と新潟は決して楽観視できない状況だった。 そんな状況下で迎えた、9日の柏対新潟の直接対決。勝った方が残留に大きなアドバンテージを得る大一番ということで、三協フロンテアスタジアム柏には今季最多となる1万471人の大観衆が集結。サポーターの熱気も最高潮となった。 1週間前の日にYBCルヴァンカップ決勝を戦い、惜しくもPK戦で敗れた新潟にとっては、是が非でも勝ち点3がほしい一戦だった。 「先週はファイナル、今節は勝ち点の奪い合い、降格がチラついている試合ということで難しい部分があったが、つねに目の前の試合が大事だし、目の前の敵が最強の敵。自分たちに物語は必要ないし、とにかく勝ちたい」と松橋力蔵監督も強調していたが、それはチーム全員に共通するものだったに違いない。 「新潟を絶対に残留させたい」という切なる思いを抱く1人は、左サイドバック(SB)の橋本健人だ。
●「横浜FCにいた昨年1年間が僕の…」
99年生まれのレフティは横浜FCのアカデミーで育ち、慶応義塾大学在学中の2020年にレノファ山口入りが内定。同時に特別指定選手としてチームに加わり、当時の指揮官・霜田正浩監督(現松本山雅)に才能を高く買われていた。 山口に正式加入した2023年にJ2・35試合出場2ゴールという実績を残し、3年間で大きく飛躍した男は、2023年に古巣の横浜FCへ移籍。初めてのJ1挑戦を果たしたが、わずか7試合しか出場できず、四方田修平監督に使ってもらえない日々に苦しむことになった。 「横浜FCにいた昨年1年間が僕のターニングポイント。プロになって試合に出れないとか、壁に当たったことがなかったから。降格もしましたし、本当に苦しい1年だった。 そういう中でも、自分に足りないものを自覚し、努力し、毎日コツコツと積み上げてきた自覚があったんで、それで今年徳島(ヴォルティス)に呼ばれて、夏に新潟に呼んでもらえることにつながった。多少なりともJ1でもちゃんとサッカーできるくらいにはなったのかなと思います」と本人もJ1再挑戦を果たすまでの経緯を神妙な面持ちで言う。 紆余曲折を経て、ルヴァン決勝という華やかな舞台に立ったことは大きな意味がある。そこで得た自信と経験を今回の柏戦に生かすしかない…。本人も気合を入れていたはずだ。 だが、前半の新潟は柏に押される展開を強いられた。