【2024 MotoGP 第18戦タイGP】バニャイアが今季9勝目でタイトルに望みをつなぐ
2024年10月25日から27日にかけて、タイのチャーン・インターナショナル・サーキットでMotoGP第18戦タイGPが行われた。ホルヘ・マルティン(Prima Pramac Racing)とフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)による息詰まるタイトル争いは、17戦終了時点でマルティンが20ポイントまでリードを拡大。残り3戦となると決して僅差とは言えないポイント差、バニャイアの巻き返しは如何に。 【写真はこちら】 MotoGP 第18戦タイGPで活躍したライダーたちの雄姿 ●バスティアニーニがスプリント2勝目!マルティンが価値ある2位をゲット 土曜日の午前中に行われた予選ではマルティンを追うバニャイアがポールポジションを獲得。2番グリッドにはチームメイトのエネア・バスティアニーニ(Ducati Lenovo Team)が続き、ランキングトップのマルティンは3番グリッドにつけた。 気温30度、路面温度46度という東南アジアらしい高温多湿なコンディションの中、13周のスプリントレースがスタート。 スタートではドゥカティワークスの2台が順当な蹴り出しを見せる中、マルティンも好スタートを切り、バニャイアのインを伺っていく。ターン1のブレーキングを遅らせたマルティンだったが、止まりきれずバニャイアとともにややアウト側に膨らんでしまった。 バスティアニーニがトップに浮上し、以下バニャイア、マルク・マルケス(Gresini Racing MotoGP)、マルティンは4位に後退。背後にはペドロ・アコスタ(Red Bull GASGAS Tech3)が迫る格好となった。 先頭のバスティアニーニが早くも逃げにかかる中、注目はバニャイア、マルケス、マルティンの2位争いに。チームメイトが先頭を走っているバニャイアが有利かと思われたが、いかんせんペースが上がらない。 これを見たマルティンは4周目の最終コーナーであるターン12のブレーキングでマルケスをオーバーテイクしバニャイア追撃のチャンスを伺っていく。 3位に上がったマルティンはバニャイアの背後につけ動きを観察。そして、7周目のターン7でラインが膨らみながらもバニャイアをオーバーテイクし2位に浮上した。 マルティンはトラックリミットによるペナルティにリーチがかかっている状態。何よりリスクを犯すことなくバニャイアの前でフィニッシュすることが最優先であることから、1.5秒先を行くバスティアニーニを無理に追わず2位キープを狙う。 マルティンに先行を許したバニャイアがブレーキングで距離を詰めるもオーバーテイクを仕掛けられるまでにはいたらず。両者ギリギリの走りを見せるもポジションの入れ替えは行われなかった。 ホールショットを奪ったバスティアニーニは一度もトップの座を譲ることなく完勝。今季2度目のスプリント優勝となった。2位にマルティン、3位バニャイアが入り、これで両者のポイント差は22に拡大。バニャイアにとっては苦しい展開であり、決勝レースでの巻き返しが求められる。 ●バニャイアが雨中のタイラウンドを制し今季9勝目 決勝日は生憎の雨。Moto3クラスとMoto2クラスはドライからウェットに変わるレースとなったが、MotoGPクラスはスタート前から雨が降り、ウェットタイヤでのスタートとなった。 気温25度、路面温度28度のウェットコンディションの中、26周の決勝レースがスタート。3番グリッドスタートのマルティンが抜群のスタートを決め、一気にトップへ浮上した。マルティン、バニャイア、マルケスのトップ3がレースを引っ張っていく。 今季最上位を狙うファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP Team)が6位で好走。しかし、4周目にインをついてきたフランコ・モルビデリ(Prima Pramac Racing)と接触し転倒を喫してしまった。 この接触は審議され、のちにモルビデリにはロングラップペナルティが科されている。そして翌5周目、トップを走っていたマルティンはターン3でオーバーランしコースオフ。これでバニャイアがトップに浮上し、マルティンはマルケスにも先行を許し3位に後退してしまった。 その後こう着状態が続いたトップ争いだったが、2位のマルケスが10周目にバニャイア背後に迫ってきた。 スプリントのバニャイアのように、ペースを上げられないマルティンはトップ2との差が広がり、苦しい展開が続く。そんな中、マルケスが再びバニャイアに襲いかかった。 14周目から仕掛けていたマルケス。バニャイアを捕えるのも時間の問題と思われていた矢先、なんと15周目のターン8でフロントが切り込んでしまいまさかの転倒。マルケスはコースに復帰するもこれで優勝争いから脱落した。 バニャイアはライバルがいなくなりトップの座をキープ。一方マルティンも2位に上がるとリスクを犯すことなく2位を守るべく慎重にレースを進めていった。 3位争いに目を向けると雨が得意なジャック・ミラー(Red Bull KTM Factory Racing)が3位に浮上。今季初の表彰台が期待されたが、そこにスーパールーキーのアコスタが猛追し熾烈なバトルが展開された。 サイドバイサイドのバトルが繰り広げられたミラーとアコスタのバトルは残り2周でアコスタが3位に浮上し勝負あり。ミラーはその後、手術のため残り2レースを欠場することが決まっているファビオ・ディ・ジャナントニオ(Pertamina Enduro VR46 Racing Team)にもパスされ5位でチェッカーを受けた。 トップのバニャイアはウェットレースをしっかり走り切り優勝。今季9勝目をあげ、タイトル争いに望みを繋いだ。レースを通して苦しんだマルティンだったが、こちらも見事なマネジメントで2位を獲得。バニャイアの先行を許したが、それでも最小失点に抑え、ポイントリーダーの座を譲ることなく残り2戦に挑む。 3位にはミラーとの熾烈なバトルを制したアコスタが入り、今季最終レースとなったディ・ジャナントニオは力強い走りで4位を獲得してみせた。 難しいレースで転倒者も多かった第18戦。中上貴晶(IDEMITSU Honda LCR)はそんなレースを走りきり13位でチェッカーを受け、貴重な3ポイントを獲得している。 次戦は11月1日から3日にかけて行われる第19戦マレーシアGP。計算上1レースで逆転が可能なポイント差ではあるが、それでもバニャイアにとって17ポイント差は厳しい状況と言える。 故にバニャイアはマルティンが得意としているスプリントから先行しなければならない。3連覇達成に向けてディフェンディングチャンピオンが意地を見せるのか、それともインディペンデント部門でタイトルを決めたマルティンが初の年間王者に向けてまとめ上げるのか、天王山と言える次戦も見逃せない。
河村大志